ローカリゼーションマップ

「強い文脈」には嘘がある レモンの展示に見る「弱い文脈」の洗練

安西洋之
安西洋之

 作家が力尽くで振り切ったのではない。そんな力を使うことを廣瀬さんは好まない。そうではなく、尖ることで存在感を出すバカバカしさに、見る人がそっと気がついたのではないか。

 コンテクストデザインについての著書もあるデザイナーの渡邉康太郎さんは、「弱い文脈」が弱いままで状況をつくる力について静かに語る人だ。強い文脈には嘘がある。「私は嘘を言わない。本当のことしか言わない」と大声で叫ぶ人を信用できるだろうか。

 この渡邉さんの言葉を借りれば(廣瀬さんの表現では「軽やかさ」になるだろう)、廣瀬さんの作品の数々は「弱い文脈」に属するために、暴力的に人を圧倒することはない。だから敵を作らない。それがために逆に、一つ一つの作品の真意をそれだけで理解しようとする人には落ち着きが悪い。 

 作品がそれぞれに対話をしながら、あらゆるところに「弱い文脈」が張り巡らされていることに気がつくと、自ずと浮き上がる全体像の見事さに脱帽する。若手の前のめりのアーティストたちも、この洗練さにはかなわないのだと思う。

 足を運んでいないで展覧会を語るのは、ぼくも怖い。しかし、考えと表現が洗練されていることの大切さは何度語っても語りきれない。

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『「メイド・イン・イタリー」はなぜ強いのか?:世界を魅了する<意味>の戦略的デザイン』『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
Twitter:@anzaih
note:https://note.mu/anzaih
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ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。

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