ぼく自身、大学を卒業して日本の大企業に勤めた。そして20代のうちに方向転換するに(会社を辞め欧州で生活をはじめるに)、そうとう手間取った。もちろん、向かうべき方向の探索や試行錯誤のプロセス自体、その後の自分の糧となった。その過程で、さまざまな方に知り合い、さまざまなアドバイスを受けたのだ。
そして、ぼくがトリノで最初に世話になったオフィスは、実業家である社長が自分の子供たちに社会や仕事を教えるための場だった。社長は「学校教育が終わった段階で子どもの教育は終わりと思っていたのだが、ある神父から子どもに職業人生のなんたるかを教えるのも親のつとめと言われたんだ」と語っていて、彼の子どもたちの中にぼくを仲間入りさせてくれたわけだ。
言うまでもないが、ぼくがトリノで学んだことは大きい。
このような経験のうえで今のぼくがあるので、息子が30歳近くになるまで、子育ては終わらないと考えている。手取り足取り何かを教えるのではなく、遠くから眺めながら、適切なタイミングでおおきなものの見方を示唆したり、彼が会うべき人のところに「なんとなく」連れていったりする、といったことだ。
そのためにも、即ち、子どもを育てていくために、親自身が学びをやめてはいけないと切に思っている。
【ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。