ベストな決断をしたいなら…考えすぎず即断せよ?
さあ、「戦略的ぼーっと」のお陰で(笑)、あなたはなかなか良いアイデアを色々と得ることができました。
いざ、決断。集めた情報や出したアイデアについて、ベストな意思決定をしたい。さて、どうしましょうか?
ここでも実は、考えすぎは禁物なのです。
オランダ・ラドバウド大学の心理学者、ダイクスターハウス教授らは、中古車を使った実験などから、人はよく考える・充分な時間を与えられるよりも、限られた短い時間で意思決定を迫られたり、少ない情報で意思決定を迫られたときのほうが正しい答えを出す割合が多いことを明らかにしました。
一般的には皆さんも、何かについてベストな選択をしたいというときには、可能な限りたくさんの情報を集めようとすると思います。部下にも「充分な情報を集めよ」と指示を出されているのではないでしょうか。
しかしもしかしたら、この行為や指示が、よくない選択をもたらしているかもしれません。
先の中古車の実験や、同様のパターンを別のもので行った実験で共通して得られた結果は、選択を行うもの・ことに対する大量の関連情報を与え、かたや充分に考える時間を与えたチームと、選択するための時間を限られた少ない時間に制限したチームとでは、正答率が限られた時間のチームの方が充分な時間のチームよりも、どれもおよそ3倍ほど高かったそうです。
情報が多すぎたり、検討できる時間が充分にあったりすると、逆に細かいところが気になったりして迷いが生じ、結果として誤回答に至ってしまったりするのです。意識的に考えるという行為は、無用なバイアス(偏向、先入観)に向かってしまうことが多いようですね。
逆に先の通り、無意識時の脳の作業ではバランスよく様々な場所にある情報を参照し結び付けたりしながらひらめきや結論を導き出したりしてくれます。自分で「どうだろう、あれかな、これかな」と頭に汗をかいて考えるよりも、自分の脳内の小人たちに働いてもらったほうが、良い仕事ができるようです(笑)。
思えば、仕事ができる人は行動が早い。しかも優れた選択をしながら、どんどん動きます。「頭の回転が早い」「センスが良い」「直感に優れている」などと言われる人たちは、無意識を上手に使える人なのではないでしょうか。
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深刻に考えすぎたり、真剣に取り組みすぎたりしがちな昨今、今回ご紹介した2つの心理学理論を踏まえて、戦略的にぼーっと・いい加減にやる時間も積極的に持つこと、深刻に考えすぎずに決断し行動するほうが、逆に成果も出しやすく、しかも精神的にも救われる、一挙両得のアプローチの模様。信じるか、信じないかは、あなた次第です(笑)。
【社長を目指す方程式】は井上和幸さんがトップへとキャリアアップしていくために必要な仕事術を伝授する連載コラムです。更新は原則隔週月曜日。アーカイブはこちら