■自分が横綱になれる土俵をつくる
山中:ストレスの引き算ができて、いざセルフブランディングに取り組もう!となったとき、なにから取り組んだらいいんでしょう?
大河内:まずは「横綱相撲がとれる土俵をつくる」ってことですね。
山中:土俵?
大河内:僕の土俵に上ってきたら、たとえ朝青龍が来ようが白鵬が来ようが、僕には絶対勝てません、という土俵です。僕の場合、税理士という土俵には日本で7万8千人いるんですよ。その中には、税金に関する知識だったら僕よりずっと上の方がたくさんいる。だから税理士という土俵で戦うんじゃなく、自分が勝てる土俵をつくるために、税理士に何かを掛け合わせていこうと思ったんです。
山中:掛け合わせるというのは、具体的にどういうことですか?
大河内:税理士という肩書きに、「スーツを着ない」とか「芸術学部出身」とか「日本一カジュアルに税知識を発信する」とかいう要素を掛け合わせていくんです。そうすると、たとえば「税理士×見た目フランク×カジュアルにわかりやすく発信」という土俵では、たぶん僕に勝てる人はいなくなる。まずは自分が横綱になれるようなちっちゃい土俵でトップになって、その土俵をどんどん広げていけばいいのかな、って思いますね。
山中:なるほど……!
大河内:相撲の例えでいうと、得意な決まり手を持っておくのも大事です。つまり、なにが得意技なのか。ライターさんも、「どんな記事でも書けます」っていう方に限って、どんな記事もクオリティがそこそこなことってありませんか?
山中:ああ~……あると思いますね。
大河内:だから「私は経営者の話を引き出すのが上手です」とか「エッセイを書けます」とか、得意な決まり手を持っておくのも、セルフブランディングをする上で重要だと思っています。そのほうが、相手も仕事をお願いしやすいですからね。
■何者かになろうとする必要はナシ!
山中:横綱相撲をとれる土俵を見つけて、自分の得意な決まり手で勝つ。これって、どう自分を理解するかっていう話ですよね。でも、自分を理解するのって難しくないですか?
大河内:おっしゃる通りです。自己理解がすごく重要で、かつ難しい。自分が理解できてない方って、TwitterとかYouTubeで「何者かになろうとする」んですよ。
山中:「何者かになろうとする」とは?
大河内:人って全員、違う人生を生きてきたわけじゃないですか。みんなすでになにか輝くものや自分だけ経験を持っていて、「何者かになってる」んですよ。だから「何者かになる」必要はないわけです。なので、すでに持っている自分の魅力を見つけて、発信しましょうと。その持っているものを理解するのが自己理解だと思うんです。
山中:大河内さんはどうやって自己理解を深めてきましたか?
大河内:めちゃくちゃ時間がかかるんですけど、僕の場合は自分の好きor嫌いなワードやニュアンスを、紙にズラーっと書き出しましたね。やってみると、100個とか200個ぐらいで詰まるんですよ。でも慣れてくると、1,000個とか2,000個とか、場合によっては1万個とか書けるんです。
山中:1万個!?
大河内:そうです。100個、200個じゃ全然駄目で、その向こう側に行かないといけないんです。「もうほんとにでないよ」って思ったとこからが勝負で。なんでもいいんですよ。モフモフというワードが好きとか。正義は大事とか。雨は好きだが梅雨は嫌いとか、もうなんでも思いつくままに(笑)。
そうやってリストアップしたワードをざーっと眺めていく。するとフッと「自分はこんなニュアンスにこだわっていて強みにできるかも」と気付くときがあるんですよね。そうやって自分にしかないものを見つけていくと、自分の土俵や決まり手が見えてくるはずです。