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新幹線回数券の廃止で再認識すべき「脅威」 ソニーやユニクロが見せつける交渉力

苅野進
苅野進

 JR東海が、東海道新幹線の回数券のうち、16区間の販売を2022年3月31日に終了するというニュースがありました。東京~名古屋・京都・新大阪といった、主要区間が対象に含まれています。その理由についてJR東海は「インターネットでチケットを購入できるサービスが広まってきたため」としています。

 これは、交通各社の割引サービスで販売量が減少していた金券ショップにさらに追い打ちをかける出来事です。回数券のバラ売りはかなり重要な商材だからです。今回は5F(ファイブフォース=5 Forces)という、一番有名なフレームワークのうちの一つを取り上げたいと思います。5Fは、自社を取り巻く競争環境における「5つの勢力」をリスト化したものです。

 新幹線回数券のケースでは、金券ショップにとって、「売り手」つまり「納品」が滞るという事態が発生したと言えます。5Fの中でも一番対応が遅れがちな項目であるとも言えるでしょう。商売というと、「売る」ことが基本行動です。しかし、納品をいかにコントロールするかという点への対応が出来ないと商売が傾く可能性があることを、この東海道新幹線の回数券廃止のニュースは物語っていると言えるのではないでしょうか。

 「納品業者」というと力の弱い下請けのようなイメージを持ち、軽視してしまう人は少なくありません。しかし、5つの勢力のうちの一角を占めるわけですので、高度な技術をもっていたり、希少性などで大きな影響力、交渉力があることも少なくないのです。

大豆ショックと半導体の対韓輸出制限

 例えば日本の大豆の自給率は7%ほどです。つまり、93%は外国からの輸入に頼らなくてはならず、外国の交渉力は強いと言えます。1973年は石油ショックの年として有名ですが、実は石油ショックの数ヶ月前に、「大豆ショック」というものが発生しています。アメリカが、アメリカ国内で値段が高騰している大豆の輸出を停止すると発表したことで、石油ショックで有名なパニックと同じようなことが大豆製品でも起きたのです。「契約済でも船積み前なら半分はキャンセルする」など「売り手」としての強さを見せつけられた出来事です。

 最近、日本が「売り手」としての強さを見せつけたのが、韓国に対して、半導体の重要な材料であるフッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素を事実上輸出停止にするという措置でした。代替品の調達が非常に大変な材料がある場合、リスクにどのように対処しておくかが大事です。特に国をまたいでいる場合、「契約も何もない」というような対応をされることは少なくありません。

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