指導項目(5) 権限は上司から奪い取るものという教育を行え
企業はたえず、今まで経験したことのない新しい事態にぶつかります。そのときに担当者が「責任も権限も決まっていない」と言っていたのでは何もできません。
「経営担当者は新事態にぶつかったときに、なんらかの決定に迫られる。その決定を、自分に与えられている権限で処置していいかどうかを判断するのだ。もしも、権限が与えられていないと思うならば、それについて、どのような権限が欲しいのか、担当者から上司に要求するのが本当なのだ」
これならば上司は、その権限を部下に与えるのか、自らの手に置き処置するのかの判断ができます。あるいは「判断する責任が生じる」と言ったほうがよいかもしれません。
これからの企業(=主体的に働くことを求める企業)にとっては、権限を明らかにする責任は担当者(部下)にあって上司にあるのではないのです。
「権限が与えられていないというのは、担当者の責任逃れ以外の何ものでもないのだ。ここのところを、よく部下に説明し、理解させておく必要がある」
指導項目(6) 分掌主義よりプロジェクト主義へ
企業や事業部に年数が積み重なってくると、組織は専門分化し、守備範囲が細かく分かれていきます。もちろん企業が成長・拡大して行くために必要なことではありますが、変化に対する弾力性と機動力が求められる昨今、この「分掌主義」は足かせになるばかりです。
「新事態にどのように対処するかが企業の将来に大きな影響を及ぼすことを考えれば、どうしても分掌主義は捨てて、プロジェクト主義への転換を必要とするのだ」
重要なテーマに対してプロジェクトを組成し、マネジャーを任命、全責任を持たせ、チームで一つの目標達成に向かう。完成、完了すればチームは解消する。このダイナミックな組織論を、一倉氏はすでに1969年に説いていました。ちょっと驚きですね。
変化に生き残れる組織は、分掌型ではなくプロジェクト型。私たちがいま、肌身に沁みて感じていることではないでしょうか。
指導項目(7) 制約条件を取り除いてやれ
ここまで見てきて、皆さんも一倉氏が上司の私たちに説いていることがご理解いただけてきたのではないかと思います。市場や顧客に向き合い、求められることに対して創意工夫、試行錯誤しながら、自律的に責任感を持って自分の役割に当たること。自分の役割は自分で勝ち取っていくこと。
もしも「**のために、できない」と部下が言うならば、その制約条件を上司の力ですみやかに取り除いてやることが上司の責務だと一倉氏は言います。これは甘やかしているのではなく、部下のできない理由を排除することで、なんとしても完遂せよという強いメッセージになるのです。
部下の制約条件を取り除いてやること。それこそが、百万言に勝る、部下への「業務を完遂しなさい」という督促なのです。
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「日本のドラッカー」と呼ばれ、実際にその教えもドラッカーにも通ずる(一倉氏はドラッカーに学んでいたところも多くあった)経営の原理原則の徹底。こういう時期だからこそ、基本に立ち返れる上司が強いし、抜擢されるでしょう。7つの指導項目、ぜひ今日から実践ください。
*文中引用:『ゆがめられた目標管理【復刻版】』(一倉定・著/日経BP・刊)
【社長を目指す方程式】は井上和幸さんがトップへとキャリアアップしていくために必要な仕事術を伝授する連載コラムです。更新は原則隔週月曜日。アーカイブはこちら