10月頭にフェイスブックで6時間ほどのサービスが停止トラブルが発生しました。ウォール・ストリートジャーナルによると、その6時間のあいだにネットフリックスの利用者が14%も増加したそうです。
ネットフリックスは同記事内で「凄まじい競争に晒されている」とコメントしていますが、個人の“限られた24時間”を巡る争いは非常に激しいものとなっています。みずほ銀行のシステムトラブルでは、他の銀行にスイッチしてしまう利用者の割合は少ないかもしれませんが、個人向けエンターテイメントの世界ではシステムトラブルでも、わずかな流行の動きでも、大きな顧客の移動が発生するのです。
業界分析のための5F(ファイブフォース)における「新規参入」と「代替品」の存在感が非常に大きいのがこのエンターテイメント分野の特徴となっています。
ネットフリックスは2018年の時点で「ライバルはフォートナイトだ」と宣言していました。ゲーム、映画、スポーツなどが入り乱れています。この状況において、戦略的に大切な視点が2つあります。
エンターテイメント業界における2つの重要戦略
1.24時間を増やせ
「24時間を増やす」とは、「ながら消費」によって、一度に2つの商品、あるいは2つのコンテンツを消費してもらうことです。1時間に2つのコンテンツを同時に消費してもらえれば、従来の考え方によれば1時間で2時間分の売り上げが発生するわけです。
実は、「ながら族」という言葉が生まれたのは昭和30年ごろです。「ながら族」とはラジオを聴きながら勉強をしたり、テレビを見ながら新聞を読んだりする人々のことでした。奪い合うのではなく、共存できる形を模索するということです。
- 仕事しながらできる運動
- 勉強×ゲーム(ゲーミフィケーション)
- 音声コンテンツ(podcastや朗読)
技術革新を土台にして、あらたな「ながら消費」が次々と開発されていくことでしょう。
動画配信では早送りをしながら視聴できる機能がありますが、これも「ながら消費」への対応と言えるでしょう。昔の早送りとは質が違い、音声が非常に聞き取りやすいのが特徴です。動画コンテンツの製作者からは不満が多く聞こえる機能ですが、かなり広く受け入れられています。
2.プラットフォームを握って「ながら消費」をまるごと支配する
10月中旬に、フェイスブックに関する大きなニュースがもうひとつありました。
「フェイスブック社が今後5年間で高度IT人材を1万人採用する」というものです。メタバースと呼ばれる仮想空間の開発へ注力していくためと見られています。現在の従業員数が6万人ほどですから、かなり大きな採用で力を入れていく意気込みです。
リビングで、テレビ画面をつけたままスマホでSNSを閲覧・投稿したり、テレビ画面をつけたままスマホでコンテンツを読んだり・見たりするという人は多いと思います。
フェイスブックのメタバースは、リビングにいる人の時間を、スマホ上のフェイスブックとテレビ画面とで争っているのならば、リビングそのものを仮想空間の中に作ってしまいその中に没入してもらおうという考え方です。プラットフォームとして、メタバース空間に常時接続してくれればいろいろなコンテンツを自由にプッシュできるようになるわけです。
つまり、メタバースのライバルはスマホそのものでしょう。