SaaS~変革のプレイヤー群像

「コロナ後」の日本経済再生に寄与 在宅勤務の必需品として導入加速 (2/3ページ)

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 業界横断型と業界特化型

 どんなサービスがあるのか

 「Horizontal SaaS(ホリゾンタル サース)とVertical SaaS(ヴァーティカル サース)に大きく分けられる。ホリゾンタルは業界横断型で、特定の業務や職種に合わせたサービス。ヴァーティカルは業界特化型で、特定の業界に提供していくサービスになる」

 ホリゾンタルの具体例は?

 「ホリゾンタルは、例えば人事・労務といったHR向け、経理・総務といったバックオフィス向け、あとはマーケティング、営業などの職種向けでいろいろなツールがある。職種によらない全社向けではコラボレーション系のサービスとしてグループウェア、ビジネスチャット、ナレッジ管理などがあり、ほかに経営データ全体の可視化を実現するビジネスインテリジェンスといわれるものもある。コラボレーション系やマーケティング・営業系は外資のサービスが多い。グローバルで新しいコラボレーションの仕方、デジタルマーケティングなど、より高度な仕事がつくられて、そのためのツールが生まれて、それが日本に輸入されてきている。HRやバックオフィスは日本の商習慣が根強い領域なので、あまり外資は入ってきていない。HRでは、労務でSmart(スマート)HR、採用でビズリーチのHRMOS(ハーモス)、勤怠管理でDonuts(ドーナツ)のジョブカンなどがある。バックオフィスでは、マネーフォワードのマネーフォワードクラウド会計など、会計や経費精算、給与計算といったところが目立っている」

 ヴァーティカルは?

 「建設向け施工管理のANDPAD(アンドパッド)やatama+(アタマプラス)の学習塾向けパーソナライズ教材サービス、トレタの飲食店向け予約管理サービス、カケハシの薬局薬剤師向け管理サービスなどがある。一度、特定の業界に入ると口コミで広がりシェアが大きくなるので、ほかの機能も次々と提供していける利点がある」

 SaaS市場は急速に成長している

 「富士キメラ総研によると、国内のSaaSの市場規模は2018年度に4800億円ぐらいだった。それが2023年には倍近くの8200億円ぐらいになるといわれている。年率でいうと15パーセント前後で成長していて、成長スピードの速い業界だ。その分変化も激しい。グローバルでは、ガートナーのデータでは2018年で800億ドル、8兆円ぐらいから2022年までに1430億ドル、15兆円ぐらいにまで伸びていく。海外の方が成長スピードは速い。市場全体の6~7割ぐらいは米国。残りを欧米と、あとは日本でほとんどを占めるというのがSaaSのマーケットだ。国内では、ホリゾンタルSaaSの領域で大型の資金調達が進んでいる。昨年だと、マーケティングオートメーションツールを提供するフロムスクラッチが100億円を調達した。次いでSmartHRが60億円ぐらいで、モバイルアプリ開発サービスのヤプリは30億円ぐらい。2018年までを振り返ると、会計サービスを提供するfreee(フリー)が65億円、名刺管理のSansan(サンサン)が30億円調達していて、その翌年の2019年に上場している。大きく調達して数字を伸ばし上場するというのがSaaS業界で今多い。新型コロナをきっかけとして多くの企業がSaaSを活用せざるを得なくなった。今後さらに急速に市場が拡大していくと予想される」

 生産性向上と多様な働き方の促進

 今なぜSaaSが注目されているのか

 「ユーザー側でいうと、インターネット環境がしっかり整ったことでスムーズにSaaSが使えるようになった。さらにユーザーのITリテラシーも高まったので、ユーザーに受け入れられるマーケットになってきて伸びている。ビジネス側でいうと、SaaSを手掛ける企業は数字が読みやすい。ユーザーとどれぐらいの接点をつくり、どれぐらい契約できて、どれぐらい継続利用されて、どう売上がストックしていくのかというKPI(重要業績評価指標)がすごく読みやすい。基本的には1回契約すると多くは継続してもらえるので、期の始まりには7~8割の売上が確定しているという状態だ。投資家としては読みやすさゆえに投資リスクが下がるので、大きな資金調達が増えている」

 日本に普及する意義は?

 「日本は人口が減少していて、企業の間では人材の取り合いのようになっている。企業としては入ってくれた人に、いかに生産性を高くして活躍してもらうかが大事。その中でITを使うと生産性が10倍にも20倍にもなる。SaaSがきちんといいものになって、それを日本人が使いこなせるようになれば、一人ひとりのパフォーマンス、アウトプットが飛躍的に上がるだろう。多様な働き方が進むという点も普及の意義だ。副業や、本業を複数持つパラレルワーク、リモートワークなどが新しい時代の働き方として注目されている。それを実現させるには、例えば1人で動いているときに、ほかの人とコラボレーションしやすくしたり、会計の管理を楽にしたり、メールをもっと楽に使えるようにしたりするツールが必要になる。SaaSはまさに、そうしたツールだ。このほか、スタートアップが増える効果もあるかもしれない。SaaSがあれば、初期費用は安く人手もかからず、最先端の仕事の仕方で起業できる」

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