Fromモーニングピッチ

素材ベンチャーは未来社会のキープレーヤー オープンイノベーションが鍵 (1/2ページ)

 デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげるのがねらいです。残念ながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のためオンライン開催となっていますが、いずれ会場(東京・大手町)でのライブ開催に戻す予定です。

 モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回は素材特集です。

 テーマ概観を説明するのはアブドゥラエフ・サマリッディンです。鉄鋼専門商社で石炭や鉄鉱石を取り扱っていたキャリアを踏まえ、主に素材系ベンチャーの支援を行っており、今回の特集を組みました。

 ベンチャーの数は4年で3割増

 素材産業はセメントやガラス、化学、紙パルプ産業などで構成されており、衣食にとって必要最低限のものから安全や環境の快適性に至るまで領域は幅広く、経済成長に連動して成長する魅力があります。その一方で、景気変動を受けやすい業界でもあります。

 素材産業が生産するのは中間製品です。経済産業省の「素材産業におけるイノベーションの役割と期待」によると、製造業の市場規模に占める比率は18%で、出荷額に換算すると56兆円に達します。生産額に対する付加価値の規模は20兆円です。

 素材ベンチャーの主要プレーヤーは、研究の成果に基づき発足したベンチャーと、共同研究型のベンチャーです。ここ数年は増加傾向にありまして、2018年の数は2278で、14年に比べて3割増えています。

 原料調達や営業力が課題

 ベンチャーは大きく分けると(1)原料調達(2)生産技術の確立(3)量産化技術の開発(4)営業力―という4つの課題を抱えています。

 原料調達については会社の信用力や実績がないため、調達力に限界があり量産化検証が停滞しがちです。生産技術の確立は外部機関の設備利用が不可欠ですが、数年の期間を要するため簡単には使えません。量産化技術の開発には数億円の資金を必要とします。営業力については、試作品を潜在顧客へ提案するリソースが限られているという現状に直面しています。これらの課題解決を図るには、大企業とのオープンイノベーションが必要です。

 素材は「Society5. 0」の一部

 経済産業省も素材産業を、未来社会のコンセプトである「Society(ソサエティー)5. 0」の一部と位置付けており、産業の活性化を図るためにオープンイノベーションのエコシステム構築を推奨し、産学官の協業を促進しています。

 エコシステムは(1)アイデア創出・事業構想(2)技術開発(3)社会実装・市場獲得―という3つのポイントで構成されており、アイデアの発想から潜在顧客に商品が渡るまでの期間短縮を目的に掲げています。それぞれのねらいは(1)が「大学・研究機関、企業との間で協業機会を設け、新しい素材事業の創出を模索」、(2)が「技術開発を共同研究し、実用化・量産化に向けた検証」、(3)が「事業化に向けてチームを強化、R&Dおよび顧客開拓を加速する事業基盤の形成」―です。

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