ーーなぜこれほどアクセラレーターで採択されるのでしょうか。
竹下氏:
長期的に誰もが納得するビジョンと合わせて、その実現に向けた実現可能性の高いファーストステップを提案できているからだと思います。今後、デジタルとリアルが融合していく未来に対しては誰もが肯定的です。
それに対して、私たちはその世界の訪れを前提に、そこまでをつなぐ道筋として今からでも実現可能な聴覚を利用した提案をしているので、大企業も納得してもらえるのだと思います。
ーー大企業との共創を進めていく上で意識していることがあれば教えてください。
竹下氏:
共創相手の利益を意識することです。体力のある大企業と組むと、つい相手からどういうリソースを提供してもらうかに思考が傾きがちです。サービスを導入してもらうだけなのであればそれでもいいですが、共創であるなら相手の利益にもコミットすることが重要です。
アクセラに参加する時から意識していましたが、共創を積み重ねることで、よりその意識が強くなってきました。
ーー特に印象に残っているプロジェクトはありますか?
竹下氏:
鹿島建設さんとのプロジェクトです。私は学生起業なので、共創が始まった時に大企業のロジックというものがわかりませんでした。大企業が何を求めているのか、どういう意思決定のフローで物事が決まっていくのかもよく分かっていなかったのです。
そんな私たちに対して、鹿島建設さんから誰々の承認のために「こういう資料が必要だよ」と丁寧に教えていただきました。初めての共創が鹿島建設さんだったおかげで、その後の共創もスムーズに進められているのだと思います。
また、鹿島建設さんは事業化への意識がとても強いです。どれくらいの予算を使って、どのタイミングでマネタイズをしていくのか、プロジェクトの最初に細かくすりあわせました。お陰でスムーズにプロジェクトを進められましたし、その後の共創でもよりお金を意識できるようになりました。
アクセラで採択してもらえるのも、具体的に事業化を意識した提案ができているからではないでしょうか。
目指すはデジタル空間のプラットフォーマー
ーーARを含めたMR(ミックスド・リアリティ)が、これから盛り上がっていくために必要なことを聞かせてください。
竹下氏:
現在のMR体験は、デモやプロモーションで終わっているところがほとんど。それでは真新しさを消費しているだけです。これからMRが社会のインフラになるには、しっかり社会に実装されるユースケースが増えなければなりません。
そのためにはARグラスの完成を待たずに、今ある環境と技術でサービスを作っていくこと。まずはMRの概念をしっかりと浸透させていくことが必要ですね。
ーーMRの技術が進化することにより、社会はどのように変化していくのでしょうか。
竹下氏:
デジタルとリアルが融け合い、フィジカルな物質とデジタルな情報が等価になっていきます。空間とのコミュニケーションが変わることで、私たちの現実に対する認識、そして生活が根本から変わっていくでしょう。
例えば今の看板は、多くても5言語ほどしか表示できません。それはスペースに限りがあるため、5言語に妥協した結果です。もしARグラスが完成し、デジタルで看板が作ることができるなら、196ヶ国すべての国の言語から自分にあった言語だけで表示することも可能になります。
今の私たちはスマホやPCの画面を通してでしか、デジタルの世界にアクセスしていませんが、MRが実現することでデジタルな情報は現実世界すべてを活躍のフィールドに変えていくでしょう。
ーー最後に、これからのビジョンを聞かせてください。
竹下氏:
デジタルとリアルが融け合う未来のMR社会を考えると、私たちはこれまで、この世界の半分のリアルな空間しか活用していません。私たちはこの世界のもう半分であるデジタル空間を埋めるためのプラットフォームとなり、MRを普及させていくインフラになっていきます。
それによりデジタルとフィジカルが等価に扱われる、人とインターネットが融け合う社会を目指していきます。現在、私たちは聴覚の部分だけしかオープンにしていませんが実はMRグラスを前提にした視覚の機能への取り組みも行なっています。近い将来、聴覚に限らず人間の五感を拡張して、より直感的にデジタルな情報と共生するサービスを作っていきます。
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