第9回 「なぜ?」で根本解決へ〈応用演習〉
この連載では、子供にロジカルシンキングを教える学習塾ロジムの主宰・苅野進が、SankeiBiz読者のみなさんに、ビジネスパーソンにとって重要なスキルであるロジカルシンキングの基本スキルを伝えていきます。第9回は、前回扱った「『なぜ?』で根本解決へ」について、実際に問題を解いてみましょう。
まずは前回の復習です。
根本解決の基本を復習 「症状」と「根本原因」
あなたが風邪をひいてしまい、治すために薬を飲んで、会社を休み、回復したとします。しかし、会社に復帰したときに相変わらずクーラーの効きすぎる座席で薄着のまま仕事をしていたら再び風邪を引いてしまいますね。
「風邪を引いた」というのは、「クーラーの効いている座席で薄着のまま仕事をしている」という原因から発生した「症状」です。風邪を治したとしても、「根本原因」である「効きすぎのクーラー」や「薄着」をなんとかしなければまた同じことになってしまいます。
風邪を引いた時に「なぜ風邪を引いたのか?」と考えることで、その原因を探り出すことで根本的な解決が実現します。
今回は、目の前に問題が発生したときに、根本的な原因に辿り着くために「なぜ?」と探求していくスキルの実践編です。
さて問題です。
問題1
あなたは保険会社の営業部で、10人の法人営業担当チームのリーダーです。チームの今期の売り上げが想定を下回ったことから、来期に向けての課題を部長や担当役員とともに検討しています。
営業日報を精査してみたところ、「顧客との商談の回数が少ないのではないか?」という問題点が担当役員より指摘されました。
あなたは「では、来期の改善点として『商談回数を増やす』ことに重点的に取り組みましょう」と対応してミーティングを終えようとしたところ、部長から「それでは、解決にならないのではないか?」と指摘を受けました。
売り上げが想定を下回った理由について、「なぜ?」を考えることで原因を探り、実現可能な打ち手を検討していきましょう。
それぞれの空欄に当てはまるものを下の選択肢から選んでください。
- A 電話をかけるリストの中に的外れなものが多い
- B 電話をしても面談に至っていない
- C 成約の見込みのある顧客の分析ができていない
問題1の解説 「問題の裏返し」に気をつける
解決策として一番意味のないことは「問題の裏返し」です。「商談が少ない」ことが問題なので「商談を増やしましょう」というようなものです。「商談が少ない」という状況を生み出している「組織」「構造」の問題に踏み込まなければ解決には至りません。
また、同様に「個人的な性質」に原因を求めるのも避けます。原因の探求が「能力が低い」や「モチベーションが低い」などで終わってしまうと、解決策が個人に任せることになりがちです。それではうまくいかない元の状況と同じです。確実に前進するためには、個人の能力が不足していたり、モチベーションが低くなっていたりする状況を「組織」「構造」の改善によって打破することが必要なのです。
問題1の解答
この図における根本原因である「見込み客の分析が出来ていない」に徹底的に取り組むのかどうかは経営判断になります。しかし、常に「なぜ?」で遡る習慣をつけておきましょう。「見込み客の分析」はもちろんですが、目の前の売り上げ目標を達成しなくてはいけないという状況では、まずは「人海戦術で電話の回数を増やす」に手をつけるという判断もあり得ます。
では、2問目です。
問題2
あなたは出版社の法務部のリーダーです。最近、著者などとの契約書の作成でミスが相次ぎました。そこで、「なぜ契約書の作成ミスが発生するのか?」について「なぜ?」と問いかけながら原因を探ってみました。
原因探求において問題点を指摘し、もう一歩「なぜ?」を進めることで改善してください。
問題2の解説 「気をつける」は「裏返し」に過ぎない
問題1の解説でも触れたように、「個人の性質」を原因にすると、その対策が「裏返し」になってしまいます。「意識を高める」や「気をつける」といった具合です。問題解決においては、仕組みによってどのような対策が可能であるかを考える必要があります。
問題2の解答例
- ・1冊のマニュアルに複数の似た雛形が掲載されている
- →複数に分けることで、どれを参照するのかを確認する手順が発生する
- ・共通部分が多すぎて、瞬時に判別がしにくい
- →瞬時に見分けがつくように、共通の内容であっても表記の仕方などを変える
問題を起こしてしまっている当人に対して「なぜあなたはミスをしてしまったのか?」と個人の資質を問うのではなく、「なぜ我々はミスをしてしまうのか?」というように環境の問題に帰着させて一緒に考えることが大事なのです。
顧客や上司の指示こそ「なぜ?」を考えよう
顧客の「~をして欲しい」という要望をその通りに実行しているのに、思ったような評価を得られないという状況はよくあることです。実は、顧客は本当の原因を理解していることは少なく、指示通りの結果を受けとったにもかかわらず「なんか違う」とか「思ったほど改善してない」などという不満が残るのです。
サービスを提供する場合、「指示通りに実行する」だけでなく、常に「顧客の本当の課題は何か?」を探り、解決してこそお互いに本当に満足のいく結果を得られるのです。
これは実は社内における上司からの指示でも同じことがありえます。同じ部署の上司であっても忙しい中で下した指示が表面的なものに過ぎない場合が多々あります。「上司はなぜこの指示を出したのか?」「本当に解決しないといけない問題は何か?」を考えて、行動する習慣をつけていきましょう。
【今日から使えるロジカルシンキング】は子供向けにロジカルシンキングのスキルを身につける講座やワークショップを開講する学習塾「ロジム」の塾長・苅野進さんがビジネスパーソンのみなさんにロジカルシンキングの基本を伝える連載です。アーカイブはこちら