一方、採用する側には「予想以上の(内定)早期化を実感している」(損保ジャパン人事部の福元利一グループリーダー)との危機感がある。損保ジャパンは今年から秋にも募集や面接を行う通年採用を本格化。29歳までを新卒扱いとし、「就業経験者でもう一度チャレンジしたい人、留学経験者らに幅広く門戸を開く」という。
経団連と大学も4月、新卒一括採用に加え、通年採用も含めた多様な形態への移行を提言。三菱商事や三井物産はすでに欧州や米国などの海外の採用フォーラムなどにも参加し、優秀な留学生や外国人の採用を実施した。日立製作所は19年度採用実績で新卒650人中、外国人が10%弱、キャリア採用は300人にのぼった。三菱ケミカルホールディングスも一部で秋採用を始めている。
企業が求める人材も変化している。人手不足に悩む建設業界は人工知能(AI)やロボット化による生産性向上が急務。清水建設は今年から建築や土木を専門とする学生だけでなく、機械や情報工学などの学生への接触も強化している。
書類選考にAI活用
人材獲得競争は人事部の仕事にも影響する。東京ガスは採用担当以外の部署からも応援を求めて面接官を増員。ソフトバンクは17年から書類選考の判定にAIを活用し、選考時間を75%削減した。今後は学生の公開データを集め、入社後に活躍した社員との相関性をAIなどで分析し、選抜することも検討している。