ミラノの創作系男子たち

「脱構築」実践するコンテンポラリー作家 流行のナラティブに目もくれず (2/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 休暇に山や海に出かけて時を過ごすこともあるが、それは頭をリフレッシュするためであって、何かインスピレーションを得るためではない。

 「ぼくのメイン舞台は街だ。人の気配がある場所のコンテクストこそが作品の源泉だ。歴史的建造物ではなく、都市郊外の荒廃した空間、例えば、今は使われない工場跡などは絶好の対象だ」

 学生時代に教えをうけた写真家、グイド・グイディは人が注目しない地方の片隅にある光景にレンズを向けた先駆者の一人だが、その影響もあるのだろう。

 旅もする。が、漫然と新しい刺激を求めるのではなく、誰かに会う、何かを具体的に実践するために出かける。

 好きな国はクロアチアやアルバニアなど東ヨーロッパ。スペインならマドリード。バルセロナは「自分の行く場所ではない」とはっきりしている。リスボンも好みだ。北ならアムステルダム。ロンドンは好きではない。ブリュッセルも暗くて重い。

 「正直に言うと、家にいるのが一番いい」と笑う。

 ここでもエネルギッシュなクリエイターイメージをあっさりとひっくり返してくれる。

 ナラティブ(語ること。とくに話者自身が主体の物語)から距離をおく。ストーリーテリングなど、もってのほかだ。マーケティングの世界で当たり前のように使っている考え方を、バサバサと斬り捨てていく彼の発言は、実を言うとぼくにとって心地よい。

 あまりにビジネスの言語に生活感覚が侵されていると感じながら、そうは言ってもなかなか離れがたい言語を「たまに置き去る」勇気を与えてくれる。

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