ミラノの創作系男子たち

「脱構築」実践するコンテンポラリー作家 流行のナラティブに目もくれず (3/3ページ)

安西洋之

 予定調和はロクなことを教えてくれない。  

 音楽を聴く。本を読む。これらの行為において、アレッサンドロはその世界にある「文法」あるいは「コンテクスト」を知ることに傾倒する。彼の目が輝くのは、そのなかに文法を崩すもの、いわば不協和音を見つけた時だ。

 作家や演奏者が意図的であろうと単なるミスであろうと、それは構わない。

 「マーケティングやコミュニケーションは受け手が期待するものを提供するわけだが、アートは受け手の予期していないところにボールを投げることだからね」とアレッサンドロ。

 アレッサンドロは、かつてはやや不摂生な生活をしていた。酒を飲む量も多かった。今は毎日、ちょっとした時間をみつけて走り、ストレッチをするようにもしている。まだやっていないが、ヨガにも興味をもってきた。

 体調と創造意欲の関係を自覚するようになったのである。

 冒頭の話題に戻ろう。

 「好んで食べるのは、生ものだね。肉でも魚でも貝でも、生がいい。野菜も。ワインは良く飲む。普通は白だ。出身のトレント産やヴェネト産が多い。ワインの最高級は赤だと思うが、そのレベルの赤じゃないなら、白を選ぶ」

 ワインを飲みながら時を一緒に過ごすプライベートライフの仲間は、アートとはまったく関係のない友人たちである。アーティストは四六時中、ほっぽっておくとものを考えてしまう。この癖を自覚しているからこそ、こうした普通の会話に没頭することを大切にする。

 ソーシャルメディアも美術館やギャラリーのアカウントはフォローせず、友人たちの投稿だけを眺める。

 それらの友人は幸せである。アーティストは自分が馴れている世界との距離の取り方を教えてくれるからだ。

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
Twitter:@anzaih
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ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

ミラノの創作系男子たち】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが、ミラノを拠点に活躍する世界各国のクリエイターの働き方や人生観を紹介する連載コラムです。更新は原則第2水曜日。アーカイブはこちらから。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ローカリゼーションマップ】も連載中です。

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