高論卓説

「8050問題」から見える社会構造の闇 心のつながりを取り戻す社会に (2/2ページ)

 現在は、保健室コーチングというプログラムを、看護師や保健師相手に指導している。子供たちはちょっとしたきっかけや思い込みで、教室に入れなくなり、学校に通えなくなるという。保健室に通ってくる小中学生に向き合える時間はわずか10分。休み時間は10分しかないのだ。すぐに話をするならばいいが、保健室にやってきても何も話をしない子供も多いという。そんな中、桑原氏は子供たちの本音と向き合う道具を作り上げてきた。印象的だった言葉は、「夢=(イコール)職業だと思う風潮を何とかしたい」ということであった。

 現場を見てきてどんな心の問題が多かったのかと尋ねたところ、コミュニケーションを中心とする人間関係だという。「自分に自信がない」「周りが自分のことをどう思っているか気になる」など。桑原氏が訴えているのは、「保健室コーチングは、人間理解である。一つ上のメタな視点から人間を理解する。同じ出来事があっても、すごく深く落ち込んでなかなか立ち直れない子もいれば、逆に、それほど落ち込むこともなく、すぐに立ち直る子もいる。その違いを理解して、生きる力を育てたい」とのこと。

 生きる力とは何なのか。人生100年時代において、ますます自らの生き方が問われる時代になっている。また社会の負の縮図も同時に浮かび上がってくる事態になっている。相談できる人がいないということほど孤独なことはない。

 社会構造の闇は大きくなるばかりである。働き盛り61万人の社会不参加による経済損失はいかばかりか。社会はいったい何ができるのか、真剣に考えなければならないテーマではないだろうか。

【プロフィル】芝蘭友

 しらん・ゆう ストーリー戦略コンサルタント。グロービス経営大学院修士課程修了。経営学修士(MBA)。うぃずあっぷを2008年に設立し代表取締役に就任。大阪府出身。著書に『死ぬまでに一度は読みたいビジネス名著280の言葉』(かんき出版)がある。

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