元受付嬢CEOの視線

副業容認が会社を強くする理由 解禁は本当にリスクなのか (3/3ページ)

橋本真里子
橋本真里子

 また、労働時間の管理についてですが、本連載でも以前触れましたが、弊社は時間よりも成果物を管理(把握)するようにしています。オフィスに8時間座っていても何の成果を上げていない人、一方リモート勤務でも8時間後にきちんと成果物を届けてくれる人。企業にとってどちらが大切でしょうか。社員を管理することに時間やコストをかけるよりも、私たち経営陣は働きやすい環境を整えることや、自分にしかできない仕事にコミットするべきだと思います。

 そしてセキュリティの管理についてですが、弊社はプライバシーマークを取得しています。社員教育は徹底していますし、毎月の全体会でセキュリティについての小話などを挟み、セキュリティに対する意識を常に持ってもらう環境を作っています。こういったことを地道に続けていくことが会社を守り、また副業での情報漏洩リスクを減らすことにつながると思います。

「新陳代謝」が成長につながる

 こんな声もあります。

 「働き手が副業先に取られてしまうのでは!?」

 もちろんそのリスクはあると思います。しかし、それは副業を禁止したからと言って防げる問題ではありません。

 もし、副業が本業になるのであれば、それは必然ではないかと思うのです。良い人材を流出させないために副業を禁止することは社員にとっても会社にとってもいい結果に繋がらないでしょう。

 他の会社や世界を見た上で「やはり自分はこの会社でこういう仕事がしたい」「うちの会社はいい会社だ」「良いプロダクトに携われている」などと感じられれば、結果的に自社の仕事にコミットしてくれると思います。しかし、他の世界を見て「もっと違う世界でチャレンジしたい」と思うようになったのであれば、それは会社として応援すべきことだと思います。一時的に「空席」ができますが、それは新たなメンバーを迎え入れるための「空席」です。会社にとっても、働き手にとっても「新陳代謝」になり、その継続が成長につながります。

 こう考えてみると、「副業を禁止する=いい人材がプールでき、会社の成長につながる」とはならないということです。

会社に頼らない生き方

 トヨタ自動車の豊田章男社長が「終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と発言し、話題になりました。これは何を意味するかというと、自分のキャリアや生活は自分で作り、守っていく必要があるということだと思います。会社が人生を守り続けてくれることが当たり前の時代ではなくなってきています。私たちは自立し、会社の看板がなくても仕事を続けていけるようにならなくてはいけなりません。

 働き手が少なくなる上では、働き方の柔軟性を拡張していくことはマストだと思います。

橋本真里子(はしもと・まりこ)
橋本真里子(はしもと・まりこ) ディライテッド株式会社代表取締役CEO
1981年生まれ。三重県鈴鹿市出身。武蔵野女子大学(現・武蔵野大学)英語英米文学科卒業。2005年より、トランスコスモスにて受付のキャリアをスタート。その後USEN、ミクシィやGMOインターネットなど、上場企業5社の受付に従事。受付嬢として11年、のべ120万人以上の接客を担当。長年の受付業務経験を生かしながら、受付の効率化を目指し、16年にディライテッドを設立。17年に、クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」をリリース。

【元受付嬢CEOの視線】は受付嬢から起業家に転身した橋本真里子さんが“受付と企業の裏側”を紹介する連載コラムです。更新は隔週木曜日。アーカイブはこちら

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