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痛いこだわり、気づけば閉店 自分探しの終着駅“脱サラ飲食店”はアリか (3/4ページ)

常見陽平
常見陽平

 とはいえトップ営業マンは、ビジネスセンスもあり、前述したように集客も上手でうまくやりくりはする。しかし、始めたばかりの頃は、必ず苦労する。会社員と、飲食店の現場は、マネジメントの対象もルールも違うからだ。会社員時代ほど優秀な同僚や部下に恵まれるわけでもない。

 「いつかは、カフェでもやりたい」と考える若手社員が散見される。ただ、飲食店経営はもともと決して楽ではないことを理解しておきたい。

 また一つ、お店が消えるという衝撃

 『銀河鉄道999』のエンディングテーマで衝撃を受けたフレーズがある。それは「星が消える」というものだ。飲食店も星の数ほどあり、そして消えていく。

 私の元同僚には、飲食店を立ち上げた人が多数いる。繁盛している店もある。ただ、たたんでしまった人も何人もいる。

 サラリーマン時代の上司や先輩と飲んでいて「そういえば、○○さんの店、最近行きましたか?」と聞くと、一気に会話がシリアスになることがある。「お前、知らんのか?」と。聞けば、とっくに閉店していて、現在はまた営業マンをやっているそうだ。脱サラならぬ、再サラである。

 お店をたたむ理由は様々だ。別に顧客が離れたとか、資金繰りが悪化した、人手不足に苦しんだなど、いかにも起こりそうな問題が原因だとは限らない。単に飽きた、疲れたという人もいる。自分の店を持つという夢を叶えたあと、新たな夢が見つかった人もいる。家庭の事情で、より安定した収入が必要になる場合もである。物件が立ち退きになった際に決断する人もいる。

 もっとも、中には「残念だ」と思う店が散見されることもまた事実だ。サラリーマン時代の同僚が集まり、収入が安定しているのは良いのだが、新たな客が獲得できていない例である。

 「○○社のたまり場」というと、関係者にとっては行きやすいのだが、気をつけなくては閉鎖的な場になる。仲間と会えるという楽しみがある一方で、またあの人たちがいるのか…という重い空気が流れたりもする。

 飲食店に必要なのは顧客の期待に応えることだ。別に「最高」に美味しいものを届けるのが良いとは限らない。とはいえ、飲食店は美味しくあってほしい。お付き合いでお邪魔したが、思ったよりも美味しくないということも一度や二度ではない。

 理想を追求しすぎる店も、気持ちはわかるのだが「大丈夫か?」と思ってしまうことがある。10年前にふらりと入ったラーメン屋はまさに、理想追求型だった。「仕事も家庭もいろいろあったが、子供たちに元気な姿を見せたくて、借金をしてラーメン屋を始めた」「ウチはよい食材しか使っていなくてヘルシー。メタボリック症候群解消ラーメン!」などとおっしゃっていた。

 申し訳ないが、それほど美味しくなかった。ラーメン屋に行くような人は別にヘルシーさを求めていない。メタボリック症候群解消ラーメンというコンセプト自体、怪しい。

 何よりも店を始めた理由が、「あなた、やめときなよ」と言いたくなるような動機だった。嫌な予感しかしない店だった。申し訳ないが、あの店が続いているイメージがまったくわかない。今度、確認に行ってみようかと思う。

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