社会・その他

かんぽ生命の不正は「過剰なノルマ」で片付く問題なのか 過去から考える (4/4ページ)

 ロシア郵便の接客、劇的に改善

 では、ソ連崩壊に伴って、こういう不正体質も一掃されたかというと当然そうならない。かつては『プラウダ』とともに旧ソ連の機関紙として1000万部超を誇った『イズベスチヤ』紙のミハイル・ベイゲル経済評論員は当時、以下のように述べている。

 「旧国営企業の経営者は、伝統的に統計をごまかすのに慣れている。旧ソ連の計画経済時代には、ノルマを超過したかのように生産量を過大報告することによって政府から奨励金を受けていたが、今は逆で生産を過小報告することによって税を逃れている」(日経産業新聞 1995年2月24日)

 これはちょっと考えれば当然で、「国営」から「民営」と看板を変えただけで、経営者もそこで働く人間は何も変わっていないので当然、不正体質も変わらない。時代や環境の変化を受けて、「手口」や「動機」がマイナーチェンジされるだけで、そこで行われるインチキは変わらないのである。

 つまり、民営化と言いながら実態はほぼ国営企業の日本郵便グループは、まさにソ連崩壊後の国営企業と同じで、過去の不正を令和バージョンに変えて繰り返しているだけなのだ。

 ゲンナリするような話だが、こういう構造が分かれば実は解決策も見えてくる。日本郵便が旧ソ連の国営企業と似ているのなら、「成功例」を真摯(しんし)に学べばいいのである。

 実はそこで非常にいいお手本がある。ロシア郵便(ロシアポスト)だ。

 ご存じの方も多いかもしれないが、このロシア国営公社はこれまで、国内外からボロカスに叩かれてきた。配達されるまで異様に時間がかかる。窓口は常に大行列、おまけに職員の態度が悪くて、暴言や無視が当たり前。サービスのサの字もない人たちだった。

 そんな「ザ・役所体質」みたいなロシア郵便が近年、大きく変わった。サービスだけではなく接客態度なども劇的に改善をしたと評判なのだ。では、一体何が変えたのか。

 『ロシア郵便は13年4月、欧州大手通信会社の執行取締役委員会メンバーで、ロシア法人の社長も務めてきた人物を社長に起用。この社長が民間部門の経験豊富な人物を経営陣に招いた。この新経営陣は、ブヌコボ輸送センターの仕分けのオートフォーメーション化に着手した他、輸送部門と郵便局が「紙と電話」で行っていた情報交換をシステム化。さらに従業員に対し、「サービスは収益を生み出す」との意識改革を進めている》(読売新聞 2016年6月1日)

 一体誰が得をするのか

 では、翻って我らが日本郵便はどうかというと、いまだに副社長は総務官僚である。しかも、長門正貢社長をはじめ、経営陣にはメガバンクなど金融機関出身者がズラリと並んでいる。だったら、民間じゃないかと思うかもしれないが、日本の銀行は「護送船団方式」を始め、日本の中で最も旧ソ連的な計画経済の洗礼を受けた業界である。

 要するに、ロシア郵便とだいぶ事情が異なり、経営トップたちがいまだにゴリゴリの「役所体質」を引きずっているのだ。

 ここにメスを入れなくてはいけないことは明らだ。ということは、現経営陣の退任はもちろん、これからどうやって霞ヶ関と縁を切っていくかを考えなくてはいけないわけだが、その機運が盛り上がる前に、日本郵便側が「ノルマ廃止」なんて先手を打ってきた。

 「ノルマ主義が悪い」「そもそも郵政民営化の歪みだ」--。騒ぎたい人たちにとっては、そういうシンプルな話のほうがありがたいのかもしれないが、そうなることで一体誰が得をするのか考えるべきだ。(窪田順生)

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