有名企業のキャッチコピーを見てみよう
なぜ20字なのか。メッセージは相手に解釈の余地を与えてしまうと誤解の元になります。長い言葉で語るほど、解釈の余地は広がってしまいます。それを避けて、明確なメッセージを相手の記憶にしっかり焼きつけるためには、違う解釈をしようがないくらいにまで削ぎ落とした短いフレーズで伝えることです。
人間はだいたい15字から20字程度のフレーズが覚えやすいといわれています。英語のスピーチでは10語にまとめることを、スピーチコンテスト世界チャンピオンのクレッグ・バレンタインは提唱しています。英語であれば、10語にまとめるのがベストの長さになるのです。
しかしながら英語と日本語では違いがあり、英語を日本語訳にすると、およそ英語のワード数の倍になるのがふつうです。例をあげましょう。
I am Japanese(3語)→私は日本人です(7字)
I like these shoes(4語)→私はこの靴が好きです(10字)
Have you ever been to this country?(7語)→この国に行ったことがありますか?(15字)
このことを踏まえて、私は日本語であれば、20字が最適な長さであると提唱しています。たとえばコマーシャルのキャッチコピーが、その良い例でしょう。おなじみのフレーズといったら、こんなコピーが思い浮かびます。
「やめられない、とまらない! かっぱえびせん」(18字/カルビー)
「インテル、入ってる」(8字/インテル)
「セブン-イレブンいい気分」(11字/セブンーイレブン)
「すべてはお客さまの『うまい!』のために。」(16字/アサヒビール)
「お金で買えない価値がある。」(12字/マスターカード)
「自然と健康を科学する」(10字/ツムラ)
“詳細に、正しく”では頭に焼きつかない
こんな誰でも聞いたことがあるテレビコマーシャルのキャッチコピーは、そのほとんどが20字以下で語られています。短いからこそパワフルで、さらに言葉のリズム感も良くなり、記憶に焼きつきやすいのです。かっぱえびせんのキャッチコピーと次の説明例を比べてみてください。
「このえびせんは、小麦粉、塩などを混ぜた生地に、天然のエビを数種類混ぜ、頭から尻尾まで殻もいれて作っているために、独特の風味が楽しめます。また揚げずに、炒ることによって生地が膨らみ、サクサクとした歯触りがして、そこが魅力になっています」
きっと、食品の開発者であれば、このように詳細まで説明したかったことでしょう。しかし、このように詳細に正しく説明されると、
「どの種類のエビなんだろう?」
「殻も入っているんだ! のどにひっかからないのかな」
「炒ると膨らむんだ。どうしてだろう」
どんどん想像が膨らんでしまいますよね。
ですから、正しい説明だとしても、多くを伝えようとすればするほど、短いコマーシャルの時間では頭に焼きつかないし、覚えられすらしないのです。こんな繊細なつくり方をしているからこそ、とにかく、食べる手が止まらなくなるほど美味しい。そんな思いが、「やめられない、とまらない! かっぱえびせん」の18字に凝縮されています。