プラスチックごみによる海洋汚染が地球規模の環境問題として浮上している。
先頃、大阪市で開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)でも主要議題になって、首脳宣言に「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が盛り込まれた。プラごみによる新たな海洋汚染を2050年までにゼロにすることを目指すという内容だ。(産経新聞論説委員・長辻象平)
海洋プラごみは、フロンガスによるオゾン層破壊、二酸化炭素による温暖化に続く第3の地球環境問題として定着しただけでなく、地球温暖化に替わって主役の座についた感さえある。
新たな地球温暖化防止の国際取り組みである「パリ協定」は来年から運用開始だが影が薄い。一体、どうしたことだろう。
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地球環境問題には、常に国際規模の政治経済の思惑がつきまとう。この冷徹な現実を忘れ、純真一途で取り組むと寄ってたかって食い物にされかねない。
1997年の締約国会議で採択された京都議定書がその好例だ。日本はしたたかな狼さんの居並ぶ交渉のテーブルについた赤頭巾ちゃんのようなものだった。
日本は以前から省エネに努めていた優等生だったので、二酸化炭素の削減余地は少なかった。にもかかわらず6%削減を引き受けるはめに陥った。
欧州は8%、米国は7%削減だったので議長国の日本は、6%の削減義務を負わざるを得なかったのだ。
欧州は十分な削減余地を有していたので排出権を売れる。おいしいビジネスチャンスの到来とよだれが垂れていたはずだ。米国は最初から空約束のつもりだったので、さっさと抜けた。
そのままなら成立しそうになかったが、何を思ったかロシアが批准したので京都議定書は2005年に発効してしまった。この議定書のおかげで「途上国」の中国は、大いなる恩恵にあずかった。そんなことを日本ではみんなきれいに忘れているようだ。
こう書くと地球環境問題への取り組みに否定的と思われるかもしれないが、そうではない。化石燃料の消費を減らして将来世代のために残すことも、より良い自然環境を目指すのも当然だ。
要は、国々の利害が複雑に絡む地球環境問題の交渉では、理想論のみでは通用しないことを胆に銘じておくべきなのだ。
この視点でプラスチック海洋汚染問題を考えるとどうだろう。