視点

海洋プラスチック汚染 温暖化問題に取って代わる勢いだ (2/2ページ)

 プラスチックの利用が本格化したのは第二次大戦後の1950年代からだ。当時から微生物の力でプラスチックが分解されないことは分かっていた。

 にもかかわらず、プラごみは町や野山に散らばり、半世紀以上にわたって世界中の川から海へと流れ込んだ。

 その間、議論されることが少なかった海洋プラスチックが、ほとんど突如と言っていいタイミングで、パリ協定の開始直前に温暖化問題を押しのける勢いで急浮上した。その背景には何があるのか。

 問題意識に上って日が浅いことは、全貌がつかみきれていないことからも明らかだ。1年間に世界の海に流れ込んでいるプラごみの推定量は、480万~1270万トンと大きな幅がある。

 しかも海で調査すると、存在しているはずの1%の量しか確認できない。99%が神隠しのごとき「ミッシングプラスチック」となっているというから、分からないことだらけの世界なのだ。小さな破片になったマイクロプラスチックに吸着された有害な化学物質が海の生態系に与える影響も研究途上。海洋プラスチックの分野で過大な削減目標に先走ると、とんでもない目に遭うのは明らかだ。

 プラスチックは医療をはじめ、あらゆる分野で使われている必需素材だ。レジ袋やストローの使用を減らしたり、やめたりしても、効果は極めて限定的だろう。漂流する漁網の方がはるかに大きな害を海洋生物に与えているはずだが、そうした声は聞こえてこない。リサイクルの徹底で自然界のごみにしないことが肝要なのだ。

 海洋プラスチック汚染も本質を押さえることなく情緒に流されると、またもや南北問題の利害の渦に巻き込まれる。

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