ブランドウォッチング

「ヤフー」も脱ぎ捨てる? ラインと統合、ウェブ覇者ならではの流儀 (2/2ページ)

秋月涼佑
秋月涼佑

 その後のポータルサイトとしての圧倒的な地位は、実際にウェブ広告媒体としてもトップページのブラパネ(ブランドパネル)を筆頭に別格の扱いとなっており、その存在感は格別です。

 Yahoo!ブランディングの直観性、抽象性、広がり

 そんなヤフーですが、もちろんサービス名のYahoo! Japanは、元々米Yahoo!に由来します。

 それにしてもYahoo!やGoogle、Amazon(アマゾン)などのネーミングを見るとき、どこの国の誰でも直感的に発音しやすく、適度な抽象性や広がりを感じさせる、最初からグローバルに普及されるサービスが意識されていただろうネーミングセンスが非常に印象的です。やはりネットサービスは規模のメリットが発揮されやすい事業ですから、グローバルに横展開されるメリットは計り知れないものがあります(この点あえて例示はしませんが、今となってはグローバル市場も視野に入れたい、いくつかの日本の大手ウェブサービス企業のブランディングは出発点においてそこら辺の吟味が十分ではなかったかもしれません)。

 自社ブランドさえ脱ぎ捨てかねない大胆さ

 そんな最強ブランドYahoo! Japanですが、今回のLINEとの経営統合劇を見ていると、近い将来必要があればすっぱりそのYahoo! Japanブランドさえ捨て去るのではないかとさえ思います。それは持ち株会社が10月にヤフーの名前を捨てZホールディングスと名乗ったことからもうかがえますし、ネーミングライツを持つヤフオクドームは早々にペイペイドームと変更してしまいました。それでなくても最近ではZOZO(ゾゾ)も買収し、PayPay(ペイペイ)、ジャパンネット銀行、LOHACO(ロハコ)、GYAO!(ギャオ!)、一休、バズフィードジャパンなどヤフー(Zホールディングス)の元には様々なサービスブランドが集結しつつあります。そこに大物LINEも一緒になるわけで、今後これらサービスを連携させるにあたって一体どんなブランディング戦略を展開するのか誰しも興味があります。

 伝統的な日本企業的視点で考えれば、双方伝統とメンツでがんじがらめの展開が考えられます。典型的には、三菱銀行と東京銀行が合併し「東京三菱銀行」、その後UFJ銀行(この銀行自体東海、三和の数奇な合併劇で誕生)が合併され「東京三菱UFJ銀行」となり、その間にどちらの名前が前に出るかを含め、国境問題のごとく時間が解決することを待って「東京」がとれて「三菱UFJ銀行」になったのがつい昨年のことです。

 もちろん業種も歴史もまったく違うわけですが、少なくともヤフーやLINEの経営陣に、いかに自社ブランドを温存するかというプライオリティはないように見受けられます。つまりそれだけウェブサービスの世界の変化は速く、ブランディング面でも変幻自在、融通無碍こそが吉ということかと思います。

 マーケティングの定石的にはブランド価値は積みあがると見なしますから、価値の積みあがったブランドのパワーを効率よく使おうと考えますし、都市設計のごとく整理整頓された体系的なブランド体系を提案したくなるのですが、どうもウェブサービスの特性からはけもの道がやがて大街道になるがごとく自然発生的なブランディングの方がユーザーに支持されるようにも感じます。またそれを一番肌感覚で知っている企業グループがヤフー・LINE連合であるに違いありません。

 いずれにせよしばらく目を離せませんが、自社ブランドさえも脱ぎ捨てかねない大胆さとスピード感、市場の先手を打つしたたかさは日本のあらゆる企業が刮目すべきように思います。

秋月涼佑(あきづき・りょうすけ)
秋月涼佑(あきづき・りょうすけ) ブランドプロデューサー
大手広告代理店で様々なクライアントを担当。商品開発(コンセプト、パッケージデザイン、ネーミング等の開発)に多く関わる。現在、独立してブランドプロデューサーとして活躍中。ライフスタイルからマーケティング、ビジネス、政治経済まで硬軟幅の広い執筆活動にも注力中。
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【ブランドウォッチング】は秋月涼佑さんが話題の商品の市場背景や開発意図について専門家の視点で解説する連載コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら

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