キャリア

ホリエモンが語る“修業期間”を真っ先に捨てるべき理由 職人ではなく「経営者」になれ (3/3ページ)

 Aさんは、いい寿司をつくるためには、まな板が大事だと考え、日本一のまな板を探す旅に出た。やがて日本に2本しかないという貴重な材木でつくった、最高級のまな板を手に入れた。次に探したのは包丁。知り合いから情報を得て、玉鋼で製造した特別製の包丁を見つけてきた。

 寿司さばきは、どこの店にも入らず、全て独学で練習した。寿司アカデミーに行くという選択もあったのだが、「そこに通って寿司職人の腕を磨いたら、アカデミーの手柄になるから嫌だ」と、断念。ある意味、徹底している。ネタの仕入れも、自分で卸し市場に通い詰め、高級寿司店に負けないレベルのネタのルートを確保した。

 経営者視点を持ち続けよ

 彼の寿司を僕も食べさせてもらった。うまい。ネタの質も仕込みも完璧で、この寿司が、修業期間の意味では“素人”のつくったものとは、信じられないレベルだった。ひと通り食べた後のシメは手製のラーメンだった。これがまた絶品にうまい。「寿司のシメといえば玉子とか、みそ汁を出すのが許せない」という理由で、ラーメンなのだという。

 オリジナルのコーヒーも出してくれた。豆は独自のブレンドで、旨味(うまみ)の脂肪分を漉さない金属フィルターを使い、特製の南部鉄瓶で淹(い)れたという。これもやはり絶品。

 Aさんのこだわりは「おいしく食べてもらって、喜ばせたい」に尽きる。修業してスキルを学ぼうという発想が根本からない。だから、本当の意味で客観性を失わず、何がお客さんを感動させるのか? という視点で、揃(そろ)えるべきものを揃えられたのだ。

 彼は味を引き立てる設備と材料を得るために、素早く行動した。道具の揃えや店の構え、パフォーマンスに細部まで手をかけた。そのこだわり度合いは、僕から見ても、ちょっとぶっ飛んでいる。

 でも、このぶっ飛びが、本当に優れた料理人に求められる要素ではないだろうか。時間は、かけたくない。できるだけ早く、できるだけ高い質の味を、お客さんに食べさせて褒められたい。そのためには、修業を捨てて好きなようにつくる。そのシンプルな欲求と破天荒なエネルギーが、唯一無二の新たな職人をつくりあげた。(ITmedia)

堀江 貴文(ほりえ・たかふみ)
 1972年福岡県八女市生まれ。実業家。SNS media&consultingファウンダーおよびロケット開発事業を手掛けるインターステラテクノロジズのファウンダーも務める。元ライブドア代表取締役CEO。2006年証券取引法違反で東京地検特捜部に逮捕され、実刑判決を下され服役。13年釈放。現在は宇宙関連事業、作家活動のほか、人気アプリのプロデュースなどの活動を幅広く展開。19年5月4日にはインターステラテクノロジズ社のロケット「MOMO3号機」が民間では日本初となる宇宙空間到達に成功した。予防医療普及協会としても活動する。14年にはサロン「堀江貴文イノベーション大学校」をスタートした。本書『捨て本』(徳間書店)以外の著書に『健康の結論』(KADOKAWA)『ピロリ菌やばい』(ゴマブックス)など多数

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