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「教養がないと欧州人から相手にされない」の嘘 問われるのは俯瞰的な視点 (1/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 教養があればよいに越したことはない。ただし、「あればよいに越したことはない」を強調するために、誇張があってはいけない。

 何を言っているかって?

 「教養がないと欧州のビジネスパーソンに相手にされない。食事の場でアートについて話せないと、まともなビジネスパートナーとしてみてくれない」

 この手のお節介なアドバイスのうさん臭さについて言っている。

 そういうシーンは確かにある。歴史や哲学あるいは文学の話題が延々と続くような場だ。日本でもあるところに行けばあるように、欧州でもある。

 いずれにせよ、「あるところに行けばある」なのである。

 日本のふつうのビジネスパーソンが相手とするような人たちがそうそうこういうタイプではないし、欧州のエリートであってさえ、今どき、歓談の相手がこの手の話ができないからと言って、さほど落胆しない。

 どこでもあまり変わらないと思うが、ありがちなのはおよそ知識の披露になり、蘊蓄を傾け過ぎる人は食事の席では嫌われるとの落ちがつく。要は、教養とは歴史のディテールを知っていて、19世紀の哲学者の言葉を諳んじることでもない。

 しかも、ハイカルチャーの凋落は著しい。クラシック音楽のコンサートに出向くのは、その人の趣味であってもはやエリートの必須科目ではない。ルネサンスの名画の裏話を語れば、「この人、そういうのが好きなのね!」と思われるかもしれないが、教養ある人としてみなされるかどうかは別問題だ。

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