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日本酒のカワウソ「獺祭」の奇跡 廃業寸前から世界的ブランドへ (2/3ページ)

秋月涼佑
秋月涼佑

 読めない商品名のインパクト

 多くの方にとって「獺祭」との最初の出会いには、そんなちょっとした驚きがあったのではないでしょうか。間違いなく「獺祭」の成功には、このユニークなネーミングが寄与しているはずです。日本酒だけとっても銘柄の数は数限りありません。昨日「うまいうまい」と盛り上がった上等なお酒も、そこはお酒好きの悲しさでしょうか、落語のネタのように翌日にはおぼえてなどいやしません。でも「獺祭」は字面もインパクトがありますが、季語にも使われる豊かなイメージもあってなぜか記憶に刺さります。しかも音は「だっさい」と酔っ払いにも覚えやすい簡潔さです。

 そして何より良いのが、商品名にマーケティング的な作為を感じさせないこと。実際蔵元も当初そんな意図はまったくなかったに違いありません。何せほとんどの人が読めなかったのですからマーケティングもへったくれもありません。

 でも、そんなアンチマーケティングな商品名こそが日本酒という本来的に手間暇がかかり商業的な感覚だけでは良いモノができないプロダクトの真実を、逆説的ですが何より雄弁に我々に伝えたという事実。商品開発やマーケティング、ブランディングに関わる人間に対する示唆が多いように感じるのは私だけでしょうか。

 銘柄ひしめくお酒カテゴリー、一歩抜け出すトレンド化

 振り返るとお酒という商品カテゴリーは、圧倒的に多数のブランドがひしめく世界です。そもそもビール、ワイン、ウイスキー、焼酎などお酒の種類自体も多く、それぞれのお酒に無数のブランドが存在します。ある意味、群雄割拠で生活者のマインドセットが常にカオス状態にあるがゆえに、あるきっかけでそこを頭ひとつ抜け出すとムーブメントが加速しやすいと感じてきました。

 “ボジョレーヌーボー””芋焼酎””ハイボール”など近年でもブームと呼ばれるほどのトレンドがひんぱんに起きていますし、個別銘柄でも「百年の孤独」「竹鶴」「オーパスワン」など脚光を浴び大ヒットやプレミアム化するブランドも折々存在するのです。

 きっと日本酒の豊穣な世界で、「獺祭」と同じぐらい上質な銘柄は少なくはないはずです。期待を裏切らない品質が大前提ではありますが、そのユニークな商品名がトリガーとなりそこから商品認知の面で頭一つ抜け出したことが「獺祭」成功の重要なステップであったことは間違いないように思うのです。

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