そのうえで「配慮は必須だが、腫物に触る態度は禁物。一般社会に参加したくて『作業所』ではなく『企業』に入ることを選んだ人たちなんだから。厳しさも自覚してもらいます」。同社では障害者雇用のノウハウを蓄積し、知見をグループ全体で共有する方針だ。
昭和62年、障害者雇用促進法の改正により法制化された特例子会社はここ10年で倍増し、令和元年6月時点で517社にのぼる。
内臓疾患による障害を持ちながら有名大学を卒業した長女(24)が特例子会社に入社、知的障害の次女(22)が自宅から数駅先のスーパー銭湯でパートをしている男性会社員(54)にも話を聞いた。
「特例子会社は親会社が大企業なので安心感がある。長女は都心で一人暮らしも始めた。次女の場合は、体は健康だが勤務先に1日4時間勤務と制限されており、もっと働けるのに残念。特例子会社に就職してほしいが、郊外の地元では採用枠が少ない」
筆者は、特例子会社に障害者雇用を集約するのは、多様性社会の推進と矛盾するのではないかとも感じる。そう水を向けると「すべての職種・職場で障害者に配慮できるか、それは無理。労使双方に都合が良い仕組みですよ」。理想と現実のはざまで、正解は見えにくい。((下)は明日3月17日に掲載します)