相手の心を鷲掴みにする=「記憶に粘る」。一度聞いたら決して忘れないメッセージ、人を行動に駆り立てるような言葉について、ハース兄弟(スタンフォード大学経営学部教授のチップ・ハース、デューク大学社会企業アドバンスメント・センター シニア・フェローのダン・ハース)がその著書『アイデアの力』で、以下の6つの法則を明らかにしました。
【1】単純明快である(Simple)
【2】意外性がある(Unexpected)
【3】具体的である(Concrete)
【4】信頼性がある(Credible)
【5】感情に訴える(Emotional)
【6】物語性(Story)
「単純明快で、意外性があり、具体的で、信頼性があって、感情に訴える物語(Simple Unexpected Concrete Credible Emotional Story)」。頭文字をつなげてSUCCESs(サクセス)の法則とハース兄弟は名付けました。
先ほどの都市伝説は、『アイデアの力』で掴みに紹介されているものに私が少し手を加えた文章です。分かりやすいストーリー、意外性の高い結末、具体的な描写、感情の揺さぶりが含まれていることが分かると思います。
古くは「口裂け女」から「ノストラダムスの大予言」、東日本大震災での「人工地震兵器説」、そして現在の新型コロナ渦での「インフォデミック」まで、こうした影響力を持つメッセージはデマに多くこの法則が含まれているものなので要注意でもあります。
「マスクとトイレットペーパーは中国で同じ材料で作られており、品不足になる」といったデマで買い占めに走る人たち(実際はトイレットペーパーの98%は国内生産で在庫も豊富にある)。「コロナウイルスは熱に弱いので26~27度のお湯を飲めば予防になると武漢のコロナウイルス研究者が発表」というデマ(体温以下の温度で死滅するウイルスが流行するはずがない)。具体的で信頼性がある風な虚言だからこそ私たちは騙されてしまいます。気を付けたいですね。
「ご存知ですか、実は~」に続く話ができるか?
事業方針発表であれば、社員たち、部下たちに、「ふむふむ、おお、なるほど!」と今後の打ち手、動きについて思ってもらいたいですし、転職面接であれば、面接官に、「ほー、ぜひそのご経験について、もっと詳しく聞かせてください!」と言わせたら勝ちです。
いま私は当社の「KEIEISHA TERRACE」上で、ユニークな事業を立ち上げた経営者の方々へのインタビューを行なっているのですが(「イマ、ココ、注目社長!」)、まさに彼らのお話もそうなのですが、事業自体がSUCCESs(サクセス)を含んでいるのですよね。だからこそ、その事業コンセプトが市場、社会に注目され、顧客を獲得し、事業成長を遂げるのだと思います。
さて、あなたの話やプレゼンテーションは、伝えたいことを一言で表しているでしょうか?(=Simple)、聞き手が興味を持つような意外性がありますか?(=Unexpected)、聞き手がイメージできるほど具体的な内容になっていますか?(=Concrete)、相手の信頼を得られるような権威者(ロバート・チャルディーニの『影響力の武器』で言う“社会的証明”)、数値、出典を明記しているでしょうか?(=Credible)、聞き手から共感を得る、感情を揺さぶる内容になっていますか?(=Emotional)、そして伝えようとしていることがストーリーになっていますでしょうか?(=Story)
なかなか6項目全てを満たす言葉やコンセプト、メッセージを作ることは難しいですが、意識することで幾つかを満たすものには大概できることを、実際にやってみて頂けますと感じて頂けることと思います。
かくいう私も、常時意識はしているものの、毎回バチっと揃った内容を作れるなどということは、残念ながらありませんけれども(汗)。しかし、当たった(と思える)ときの嬉しさはありません!その(わずかばかりの回数の…笑)記憶が自分の重い腰をあげさせて、こうした連載や講演、事業策定などへと仕向けてくれているように思います。お互い、頑張りましょう!
ひとつ、私のやり方を披露しますと、折に触れて「ご存知ですか、実は~」を枕詞に話すチャレンジをしてみるとよいですよ。
この後に続く内容が、今から話しかける相手にとって「えっ、そうなんですか?」「本当に?!」「なるほど!」となるような話をできているかどうかが勝負な訳です。これを継続徹底トレーニングいただければ、カリスマ経営者並みのコトバ力が鍛えられること、間違いなし!(と信じてトライしております)。
【社長を目指す方程式】は井上和幸さんがトップへとキャリアアップしていくために必要な仕事術を伝授する連載コラムです。更新は原則隔週月曜日。アーカイブはこちら