とてつもない経営成功を支えた「10の原則」
アイガー氏はなぜ、こんなとてつもない経営ができたのでしょう? 自伝である近著『ディズニーCEOが実践する10の原則』によれば、アイガー氏は自身で「私が学んだことを振り返ってみると、真の10のリーダーシップに必要な10の原則が浮かび上がってくる。私を助けてくれたこれらの原則」と述懐しています。
- 前向きであること
- 勇気を持つこと
- 集中すること
- 決断すること
- 好奇心を持つこと
- 公平であること
- 思慮深いこと
- 自然体であること
- 常に最高を追求すること
- 誠実であること
こうして並べてしまうと、聞けば当たり前のような、それぞれは平凡な原則ですが、アイガーはこの10原則で、スティーブ・ジョブズを、ジョージ・ルーカスを口説き落として、ピクサーやルーカスフィルムを手に入れたのです。
この10の原則についてはショートレビューがされており、端的ながら腑に落ちますので、ご興味ある方は本書をご覧頂ければと思います。この10の原則の解説もさることながら、『ディズニーCEOが実践する10の原則』には付録の章が12ページあり、ここを読むだけで上司の皆さんが本書を購入して十分お釣りがきます(早川書房さんの宣伝みたいになってしまいますが)。私がピンと来たものをいくつか抜粋ご紹介しますと…。
■卓越した仕事をすることと、人を気遣うことは、両立できる。完璧を目指しながらも、物だけでなく人を気にかけることを忘れてはいけない
■リーダーが自分の直感を信じ、経緯を持って人と接していれば、その人が導く組織もまた同じ価値観を体現するようになる
■経験よりも能力を評価・信頼し、その社員が難なくできると思う以上の力量を必要とする役割を与えよう
■無難にやりすごすことを目標にしてはいけない。偉大な何かを創り出すことを目標にしてほしい
■企業の評判は、そこで働く人々の行動と、その企業が生み出すプロダクトの品質がすべて積み重なったものだ。いついかなる時でも社員とプロダクトに誠実さを求めなければならない
■リーダーは優先順位をはっきりと繰り返し伝えなければならない。優先順位がはっきりと伝わらなければ、周りの人も何を優先したらいいかがわからなくなる。すると、時間と労力と資本が無駄に使われてしまう
■もし何かが『違う』と感じたら、それはあなたにとっては正しい道ではないのだろう
■世間からいくら権力者だと言われたり重要人物だと持ち上げられても、自分が何者かをしっかりと持っていなければいけない。自分を過信しはじめ、肩書きに頼るようになったら、自分を見失った印だと思った方がいい
もしあなたがハリウッドのメジャータイトルファンなら、この10年ほどでのピクサー作品やスターウォーズ、マーベルのアベンジャーズシリーズなどの企画・製作の舞台裏にワクワクする数時間を本書で過ごすことができるでしょう(個人的にはアイガー氏がABC時代に「ツイン・ピークス」の一連のプロデュースに関わっていたこと、その放映やデビッド・リンチ監督との製作秘話~ごたごた~の部分にも相当惹き込まれました)
今回の締めに、読者上司の皆さんにぜひこれをやっていただければリーダーとして効果絶大という、アイガー氏の教えを掲げます。
「リーダーの仕事はたいてい複雑で、多大な集中力とエネルギーが必要とされるが、次のような単純なメッセージならわかりやすい。《私たちの目的地はここ。そこにたどり着く方法はこれ》」
ロバート・アイガー氏が築き上げたここまでのメジャースタジオ買収の成功とデジタル配信事業への進出を、新社長のチャペック氏がどう継承していくのか(いけるのか)。そしてオーナーシップという意味ではこの新型コロナに揺れる映画産業、米国経済の動静の中で、本当にアップル傘下入りなどが起こるのか。映画ファンとしても、経営者としても、非常に興味深く、目が離せません。
【社長を目指す方程式】は井上和幸さんがトップへとキャリアアップしていくために必要な仕事術を伝授する連載コラムです。更新は原則隔週月曜日。アーカイブはこちら