ローカリゼーションマップ

イノベーションにヒーローはいらない 「意味ある目的変更」は深い思考から (3/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 1人の発想が仮に斬新であっても、自己完結型の人間でイノベーションを目指すコミュニティは動かせない。しかも、今強く求められるイノベーションは、発想の斬新さに基づくものではない。「意味ある目的変更」である。この点に多くの人の関心が向いている。したがって、その変更をコミュニティのなかでコンセプトとして強化していき、それを実践に移行していくコラボレーションのプロセスが重視されるイノベーションにあって、ヒーローは不要なのだ。

 即ち、意味ある目的地の変更を成し遂げるには、対象とするコンテクストの理解に基づいた「深い思考」が必要だ。キャラクターが尖がっているかどうかなど、あまり問題ではない。それは周囲に潰されないための目隠しに過ぎない。

 ここでイノベーターに必要なのは、よく言われる旅の回数や移動距離に象徴される精力ではない。自然のなかに浸ることでもない。それらは気分転換や頭の切り替えに役立つかもしれないが、肝心な点で本当に必要なことではない。

 以下は比喩である。

 本当に必要なのは、歴史ある都市を色々なアングルから散策しながら、肩を並べて歩いている人の呟きをしっかりと耳に留めることだ。そしてその相手と楽しい会話ができること。

 かなりイノベーターの印象が変わるでしょう?

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『「メイド・イン・イタリー」はなぜ強いのか?:世界を魅了する<意味>の戦略的デザイン』『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
Twitter:@anzaih
note:https://note.mu/anzaih
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ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。

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