最強のコミュニケーション術

コロナストレス、発散のつもりで実は増幅させている行動 (2/2ページ)

藤田尚弓
藤田尚弓

 緊急事態宣言が解除され、また生活が大きく変わろうとしています。このような状況では、心に疲れが溜まりやすくなります。無意識のうちに心の中で、ネガティブな独り言をつぶやいている人もいると思います。ネガティブな思考になってしまったときは、他のことを考えるなどして、気分を変えるようにしてみてください。今は心の負担を軽くすることが第一です。しっかり向き合うのは、状況に慣れて心の負担が軽くなってからでも遅くはありません。

 出勤再開 部下の不満は聞かないほうがいい?

 自粛もストレスになったと思いますが、出勤を再開するという変化も心の負担になります。皆さんの職場にも、心に疲れが溜まっているように見える人が出てきている頃かと思います。「話を聞いて、楽にしてあげたい」と感じるかも知れませんが、筆者はネガティブな話題はあえて聞き出さないことをお勧めします。あえてネガティブな感情を反芻させるようなことは、まだ避けたほうがいい時期だからです。

 「不安はない?」といった質問をされると、私たちはその答えを探そうとします。本来であれば気にしないで済むようなことまで、上司からの質問をきっかけに探してしまうのです。そうなると、これまで不満に思っていなかったことまで、不満と認識するようになってしまいます。部下がどうしても話したいという場合は別ですが、今は希望や感謝など、不満以外のことに目を向けられるようアドバイスしたほうがよいでしょう。

 暗い話題を変えたいときのお勧めは「懐かしい話」です。社会の転換期には懐かしい話題が出てくることが増えます。懐かしい話題には気持ちをポジティブにしてくれる効果も期待できるので(※1)、困ったときに試してみてください。

 感情を表に出すことだけが解消法ではない

 ストレスにさらされたり、またそれが溜まったりすると「吐き出したほうがいい」と考えがちです。しかし、ストレスはネガティブ感情になって表面化することもしばしばです。発散しようと、その感情を「攻撃」に転嫁したり、何度も思い起こすことは決して効果的とはいえないことを覚えておきましょう。

※1 Wildschut,T., Sedikides,C., Arndt, J., & Routledge, C.(2006) Nostalgia:Content, triggers, functions. Journal of Personality and Social Psychology, 91, 975-993

藤田尚弓(ふじた・なおみ)
藤田尚弓(ふじた・なおみ) コミュニケーション研究家
株式会社アップウェブ代表取締役
企業のマニュアルやトレーニングプログラムの開発、テレビでの解説、コラム執筆など、コミュニケーション研究をベースにし幅広く活動。著書は「NOと言えないあなたの気くばり交渉術」(ダイヤモンド社)他多数。

最強のコミュニケーション術】は、コミュニケーション研究家の藤田尚弓さんが、様々なコミュニケーションの場面をテーマに、ビジネスシーンですぐに役立つ行動パターンや言い回しを心理学の理論も参考にしながらご紹介する連載コラムです。更新は原則毎月第1火曜日。アーカイブはこちら

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