過去にも課題 復旧阻むごみ問題
過去の災害でも課題となってきた災害ごみ。京都大の浅利美鈴准教授(環境工学)は「被災地の復旧には、災害ごみの迅速な処理が必要だ」と指摘する。
平成26年の広島県土砂災害では58万トン、28年の熊本地震では311万トンの災害ごみが発生した。処理にかかった期間は、広島が約1年半、熊本は約2年。水害で発生する災害ごみは家電や家屋の木材などが攪拌(かくはん)されて泥をかぶった状態になっているため分別にも時間がかかり、処理は遅れがちだ。
環境省によると東日本大震災以降、自治体にとって災害ごみの「対応マニュアル」といえる災害廃棄物処理計画の策定が全国で進んだ。ただ、今年3月末時点で、実際に計画を策定したのは全国1741市区町村の51%の889にとどまる。人口規模が小さい自治体は職員の人手不足を理由に、対応が遅れがちだという。
今回の豪雨で甚大な被害を受けた熊本県は30年から、各市町村と研修会を行うなどして備えを進めていた。だが、想定を超える被害が相次いだため、計画通りの処理が不可能になるケースが続出。ごみ処理を目的とする車による渋滞や、現場の混乱につながっている。
過去の災害ではボランティアなどから分別方法や受け付け時間などの情報を被災者が受け取り、処理を円滑に進めることができた自治体もあった。浅利准教授は「新型コロナウイルス感染予防のため、県外からボランティアが入りづらいという特異な状況も影響している」と指摘。「ボランティアの減少により、正確な情報が被災者に届いていないのでは」と推察した。