だが、よくよく聞いてみると、もっと趣味らしい趣味があった。生地を集めることだ。どこの国に旅行しても気に入った布地を偶然みつけると買ってくる。そしてそれらの布地を型紙からおこして裁断し、服を自分で縫うのだ。
どこかの専門学校で習ったわけではない。お祖母さんからの手習いだ。身に着ける服が全てシルビアのデザインではない。当然、既製服も買う。この話を聞いて、彼女のお洒落ぶりの裏をはじめて了解した。
彼女のファッションには、どこか「世界観が香る」のだ。
そういえばと思い出した。自らのブランドを持ちながら、1980年代末からクリスチャン・ディオールのクリエイティブディレクターも務めたジャンフランコ・フェレは建築家だった。
シルビアはインテリアデザイナーだ。ハサミもミシンも器用に使いこなすらしい。生地を3次元に展開させるのが得意なのも当然だ。
そうと思い至ると、窮地に陥った人たちを見守るとの彼女の言葉が、さらに現実味を帯びてくる。自らが構想をたて、手を動かせて何かを作れる人の生きる道には力強さがある。
エンジニアでもなく、建築家でもなく、インテリアデザイナーになったシルビアに乾杯だ。
【ミラノの創作系男子たち】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが、ミラノを拠点に活躍する世界各国のクリエイターの働き方や人生観を紹介する連載コラムです。更新は原則第2水曜日。アーカイブはこちらから。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ローカリゼーションマップ】も連載中です。