働き方ラボ

こんな時こそUIターンを考える 予測不能な人生に備えて“エア移住”を (2/2ページ)

常見陽平
常見陽平

 地方で暮らすデメリットも解消

 ここで立ち止まって考えたいのが、「悠々自適な田舎暮らし」なる幻想を捨て去ることである。移住により得られるものは、実は仕事の面白さである。地方にありつつも、都市部に、世界につながっている企業は存在する。また、自分の仕事の責任も増す。「田舎でスローライフ」なるものは存在しなくはないが、幻想かもしれないと認識しておきたい。一方、いまはネットがあるし、交通網も発達している。以前ほど地方で暮らすデメリットも解消されていることも認識しておきたい。

 地元で今、流行しているものについても敏感になっておきたい。労働者は生活者でもあるのだ。生活者視点で、その地域は楽しいのかということを考えておこう。家族のことも考えよう。教育、保育、医療、介護などに関する情報はチェックするべきだろう。

 生活費の実態についても調べておこう。「地方は物価が安い」という話がある。たしかに、物価は安いのだが、それでもその地域の中での都市部では高くなる。さらには、地方ならではの出費というものもある。たとえば、クルマ移動が前提で、ガソリン代や維持費がかかる、冬の寒さを凌ぐために灯油代がかかるなど、都市部での生活では考えられなかった出費も増えることもある。

 手っ取り早いのが、地元の家族、友人・知人に相談にのってもらうことである。その地域で働く上での醍醐味、魅力と課題を確認することができる。生きた情報を大切にしよう。

 移住先は慎重に

 移住を本気で考えるなら、「時期」の問題についても考えておきたい。林修先生の「いつやるの? 今でしょ!」が流行語になってから7、8年が経過した。今、言うのはなかなか勇気がいる言葉ではある。ただ、私は移住に関しては「いつやるの? 今なの?」理論を提唱している。いつ移住するのかを冷静に考えよう。自分や家族の年齢、いまの仕事でやり遂げたいことなどを考えて決断したい。

 移住先も慎重に考えたい。自分にとって合いそうかどうか、仕事と家庭の両立は可能かどうか。自分が実現したいと思っていたことを叶えられるかどうか。問われるのは、就職・転職活動とまったく変わらない。「あなたは、何を大切にしたいですか」ということだ。

 なお、最近では、オンラインツアーや相談会まで実施されている。たとえば、私がUIターン応援団長を拝命している石川県では、オンラインツアーやオンライン相談会を開いている。

■8月29日開催 オンラインツアー・能登で見つける新しい自分  #七尾市 #羽咋市( https://ishikawa-note.jp/event/357

■石川県移住オンライン相談( https://iju.ishikawa.jp/news/6592/

 その他、各自治体が移住相談センターを開設している。「○○県 移住」などのキーワードで検索すると出てくるので、ぜひ相談してみてほしい。

 もちろん、エア移住の過程でいくらリモートワーク時代といえど、東京など都市部で働き、生きることの魅力を再確認できるかもしれない。それはそれで大きな収穫だ。これからの人生を考えるために、エア移住をし、地域間移動という選択肢も考えてみよう。

常見陽平(つねみ・ようへい)
常見陽平(つねみ・ようへい) 千葉商科大学国際教養学部准教授
働き方評論家 いしかわUIターン応援団長
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部准教授。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。主な著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。

【働き方ラボ】は働き方評論家の常見陽平さんが「仕事・キャリア」をテーマに、上昇志向のビジネスパーソンが今の時代を生き抜くために必要な知識やテクニックを紹介する連載コラムです。更新は原則隔週木曜日。アーカイブはこちら

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