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タレント独立相次ぐ芸能界のナゼ 公取委効果かコロナ禍の余波か (1/2ページ)

 新型コロナウイルスが猛威を振るい始めて以降、芸能人が所属事務所から独立・移籍するケースが相次いでいる。手越祐也さん、米倉涼子さん、柴咲コウさん…。かつて独立はタブーとされており、事務所の意向次第では“制裁”として業界から干されることも珍しくなかった。変化の背景には、独占禁止法を適用してタレントの権利を保護する流れや、ネットメディアの興隆などがある。「コロナ禍で仕事が減り、タレントによっては事務所に所属するうまみが少なくなった」と指摘する専門家もいる。(三宅令)

 独禁法適用で潮目に変化

 「自分がやりたいアイデアが、ジャニーズにいたらなかなかかなわない」

 6月23日、アイドルグループ「NEWS」の元メンバーの手越さんは記者会見を開き、YouTubeで生中継。画面の向こう130万人以上の前で、週刊誌で報じられた緊急事態宣言下での「飲み会」スキャンダルの理由や独立の経緯、今後の展望を語った。

 明るい表情とはっきりした物言いに、芸能関係者は「以前なら考えられないこと」と話す。かつて独立は、先行投資をしてスターに育て上げた所属事務所からすると「裏切り」と同義であり、制裁として仕事を干されるなど、芸能界での死を意味しかねなかった。

 女優、のん(旧名・能年玲奈)さんの例が顕著だ。のんさんは平成25年上半期に放送された連続テレビ小説「あまちゃん」でヒロインを演じ大人気に。だが、所属していた事務所とのトラブルで独立騒動となり、28年に契約が終了して独立。騒動の前後から芸能活動の表舞台からは消え、特にテレビ番組で見かけることはなくなった。

 その流れが大きく変わったのは平成30年2月、公正取引委員会が芸能人などのフリーランスにも独占禁止法を適用すると見解をまとめてからだ。事務所が契約を終えた芸能人の移籍や独立を一定期間制限したり、活動を妨害することを示唆したりすれば独禁法で禁じる「優越的地位の乱用」にあたるとしたものだ。

 公取委は昨年、ジャニーズ事務所が民放テレビ局などに対し、元SMAP(現・新しい地図)の3人を「出演させないよう圧力をかけていた疑いがある」として、行政指導した。

 以降、同事務所では、今年3月に元SMAPの中居正広さんが独立、6月に手越さんが独立、7月にTOKIOの長瀬智也さんが来年3月の独立を発表するなど、比較的スムーズな退所の流れができつつある。

 関係者は「昨年7月に創業者のジャニー喜多川さんが亡くなり、事務所の求心力が低下している」と指摘。その上で「芸能人を独禁法で守ろうとする動きも加速しており、ジャニーズだけではなく、業界全体で独立への風当たりは弱まっている」と話す。

ネットメディアの興隆

 独立に踏み切る背景には、インターネットによって個人での発信が容易になっていることも挙げられる。手越さんは事務所を離れた後、SNSなどで芸能活動を続け、ファンとの交流を維持している。YouTubeなどの動画配信サイトを使えば、吉本興業を退所した宮迫博之さんなど、テレビの地上波に登場しない芸能人でも人前に出られる。

 別の芸能関係者は「これまで大手事務所が力を持っていた理由の1つは、テレビ局のキャスティングの主導権を握っていたこと」と指摘する。大勢の前に出られる手段がテレビだけだった時代は、大手事務所に所属してつてのあるテレビ局へ売り込んでもらうのが、スターになる近道だった。「局としても大手の売れっ子を使っていれば、最低限の視聴率を確保できた。だから個人や小さい事務所には仕事が回ってこなかった」と振り返る。

 しかし、ネットメディアが興隆し、ユーチューバーらがテレビ以外の媒体で知名度を上げ、稼げるようになった現在、「無理して大手事務所に居続けなくてもよくなった。新たな活躍の場を目指して、独立や移籍が増えるのは自然な流れだ」と説明する。

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