最強のコミュニケーション術

なぜあなたの謝罪では許されないのか 相手の怒りを緩和できない4つの理由 (1/2ページ)

藤田尚弓
藤田尚弓

 伝え方や言い回しを変えると、自分を取り巻く環境が変わり、やってくるチャンスも変わっていきます。皆さんは自分のコミュニケーションに自信がありますか? この連載ではコミュニケーション研究家の藤田尚弓が、ビジネスシーンで役立つ「最強のコミュニケーション術」をご紹介していきます。

 第21回は「なぜあなたの謝罪では許されないのか」がテーマです。謝ったのに態度を変えない人に対して「心が狭い」「こちらは謝ったのに許さないのは相手が悪い」など、怒りを感じてしまったことはありませんか。コミュニケーションには、ちょっとした言い回しや伝えるときの表情、伝える順番などでニュアンスが変わってしまうという特性があります。謝罪が必要になるようなシーンでは、微妙なニュアンスにも敏感になってしまうだけでなく、感情的な反応をしやすいという悪条件が揃います。なぜ謝ったのに相手の怒りを緩和できなかったのか。よくある4つの理由と対処法についてご紹介します。

1.「繰り返しの裏切り」だと思われている

 謝罪には相手の怒りを緩和し、許しの感情を引き出す効果があります。しかし相手を怒らせたのが初めてではない場合、特に、同じことで怒らせてしまった場合は、許してもらうまで時間がかかるかも知れません。

 例えば、過去に頼まれたことを忘れてしまったことが複数回あり、今回もまた忘れてしまったとしましょう。このような場合「またか」と思われてしまうので、謝ってもすぐに許してもらうのは難しいでしょう。最悪な展開は「キミはいつも言われたことを忘れるじゃないか」といった言葉に反応してしまうことです。「いつもではないのに」と不当な評価に腹を立てたり、僅かな言い回しの違いを主張してしまったりすると、さらにこじれてしまいます。

自分の子供や家族を想像

 このケースの対処としては、相手の「軽んじている」という思い込みを緩和することがポイントになります。謝罪の言葉に加えて、決して軽んじていたわけではないということを伝えましょう。どれだけ大事に思っていたか、自分の言葉で丁寧に説明してみてください。合わせて、再発防止のためにどうするか、今後の対策も伝えるとよいでしょう。

 「謝っているのに責めるなんて」という気持ちになってしまった場合には、自分の子供が何度言っても宿題を忘れて叱っているシーンを思い浮かべてみてください。「この前も忘れたじゃないか」「いつも口ばっかり」など、責めるようなコミュニケーションをとりたくなりませんか。相手を心配して良くなってほしいのに、つい感情的になって批判的な言い方をしてしまう。これは誰にでもある、残念な特性だと考えてみましょう。そうすることで責められているという現象をいったん横に置くことができ、関係修復を優先できます。

2.「表面的な謝罪」だと思われている

 謝罪の言葉は口にしているものの、心から反省しているように感じられない。そんな表面的な謝罪だと思われてしまうケースもあります。例えば、謝罪を求められたことに応じて「どうもすみませんでした」と謝ったとしましょう。これが表面的な謝罪だと感じられてしまった場合「あなた達の対応はなっていない」といった態度に関する批判に問題がすり替えられ、相手の怒りが増幅することがあります。

 「こちらは謝っているのに」といった感情は表情や言動に出やすいものです。ちょっとした行き違いから二次クレームに発展してしまうこともあるでしょう。

「思いやり」が自分のストレスをも軽減

 表面的な謝罪だと思われてしまうケースの対処法としては、短いセンテンスで「謝った」と思ってしまわずに、長い文章で、時間をかけてお詫びをするのがお勧めです。長く話そうと意識すれば「ご心配をおかけしてしまいましたよね」「ご不便をおかけしてしまいましたよね」といった、相手の気持ちに寄り添う言葉も出てきますし、「今後はこのようなことがないように××をしていきます」「おかげさまで、改善点がわかりました」といった今後に繋がるような言葉も見つかると思います。

 昨今、過剰なクレームをつける人たちがいるため、早い段階で「クレーマー?」と決めつけたくなってしまうことも増えたと思います。私たちはどうしても自分を守るような思考を自動的にしがちです。一瞬でいいので、怒りの根本にある悲しみを想像してみるとよいでしょう。大切に扱われなかった、期待していた良好な関係を築けなかったといった残念な気持ちを裏返せば「大切に扱ってほしかった」「良好な関係を築きたかった」ということになります。怒りへの対処は嫌なものですが、この部分に対処すると考えれば少し気が楽になるのではないでしょうか。怒りをぶつけてくる相手を思いやるのは難しいと思いますが、自分のストレスを軽くするためにも試してほしい対処法です。

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