ミラノの創作系男子たち

“職人技”の可能性 伊財団ディレクター、アルベルト・カヴァッリのバックグラウンド (1/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 アルベルト・カヴァッリの声はとてもよく響く。カンフェランスに登壇している彼は、スピーチしながらも独唱しているかのようだ。それも話すテーマはイタリアの美や職人文化だ。声と内容が調和している。

 アルベルトは2つの財団のディレクターについている。一つは長くカルティエの重要なポジションを務めてきたフランコ・コローニの創立したミラノに本部があるコローニ財団だ。イタリアの職人技の維持と普及を目的としている。

 もう一つはスイスのジュネーブにあるミケランジェロ財団である。これも職人技やクリエイティブ分野のヨーロッパレベルの交流を図る組織で、トップはラグジュアリーのコングロマリット、リシュモンの創始者のヨハン・ルパートだ。

 毎春に開催されるミラノデザインウィークや2018年からヴェネツィアでスタートしたイベントで、これらの組織がクラフトマンシップの可能性を力強く示している。その中心で活躍しているのがアルベルトだ。

 アルベルトは、これらの2人と仕事をするなかで得るものが多いと語る。目が開かれる思いをすることが多々ある、と。言うまでもなく、いわゆる社会的ステイタスのある人物たちだから、彼らから刺激を受けるというわけではない。その理由は次の記述を読めばわかるはずだ。

 彼が強く惹かれる時間は、さまざまな職人との付き合いだ。彼らの才能には驚かされ、時の積み重ねがそのまま目の前に現出しているかのような工房のリアリティにも圧倒される。

 アルベルトは「職人から学ぶことは多い。驚きありきだ。驚きが好奇心を突き動かすのだ。人はその好奇心からコンピタンスを獲得する」と語る。

 更に、そのコンピタンスこそが自身を上昇気流に向かわせてくれることを彼は確信している。 

 何らかの具体的なモノが人の知恵と手から生まれるプロセスは、頭でっかちの人間にとっては心底ワクワクさせる。そういう経験をぼくもこれまでたくさんしてきたから、彼の語りには納得がいく。

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