今日から使えるロジカルシンキング

「スムーズにじゃんけんできる」低遅延のビデオ会議 勝てる後発品の共通項 (1/2ページ)

苅野進
苅野進

そもそも、なぜビデオ会議はイライラするのか?

 先日、Googleの元エンジニアと元プロダクトマネージャーの2人が率いるスタートアップが、新しいビデオ会議システムを開発したという発表がありました。「tonari(隣)」と名付けられたそのサービスは、既存のビデオ会議サービスにある「イライラ」や「違和感」を解決して、まさに人が隣にいるかのような臨場感で対話が可能になると宣言しています。彼らは既存のビデオ会議サービスが「イライラ」し「違和感」を感じる原因は次のようなものが主なものであると言います。

  • 0.15秒以上の遅れ
  • 目線
  • 音声

 彼らは「Zoom」などでは多発しているという0.2秒以上の遅れは人がストレスと感じるものだとし、tonariは0.12秒ほどの遅れしかないそうです。これを「じゃんけんがスムーズにできる」ほどの遅延と表現しています。

 目線については、独自開発の表示パネルのちょうど良い高さにカメラを埋め込んでいて「目が合っている」ような体験を提供します。音声も同様に臨場感にこだわっているそうです。

 ここまでの情報をどのように感じましたか? 「遅れ」「目線」「音声」が既存のビデオ会議システムの重要な欠点のように感じたのではないでしょうか?

 このように「ビデオ会議」という既存の大きなマーケットでは、不満もなんとなく生まれています。そして「ビデオ会議」というものに対するある程度の前提知識も世の中に広まってきています。そこに、「全く新しい」ではなく、「より良い」とか「少し使いやすい」で参入するのが「後発サービス」の大きな強みです。

 このtonariのメッセージが広く伝われば、ビデオ会議サービスを選ぶ際に「このサービスの画像の遅れはどれくらいなのか? 0.15秒以下なのか?」と調べるようになりますね。それこそtonariの大きな戦略です。

「少し使いやすい」でスイッチさせたメルカリ

 後発で、マーケットシェアを大きく奪った好例がフリマアプリ「メルカリ」です。先ほどから使っている「少し使いやすい」という表現は実はメルカリの創業者の言葉です。メルカリが登場した時には、CtoCつまりユーザー同士の物々交換マーケットはすでに「ヤフオク!」存在しました。メルカリは新しいサービスを開発したというほどではなかったのです。しかし、徹底的にヤフオク! よりも使いやすいアプリインターフェイスやシステムにこだわり、そのメッセージが伝わったことで、ヤフオク! を敬遠していた人にも広がりました。

 ちなみに彼らが徹底して伝えているのは「出品が楽」ということです。「買う」人が現れて初めて商売が成り立つのですが、キーは「出品が楽」を浸透させて、「出品数」を増やすことだという「問題設定」をして実現してきました。「本の出品が15秒でできる」というCMが印象に残っている方も多いと思います。その後も「10秒で相場チェック」など「他にもある機能だけど、メルカリの方が楽」というアピールをしっかりと続けています。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus