ビジネストラブル撃退道

多少の批判が「ネット炎上」になるワケ 正しい対処法を考える (3/3ページ)

中川淳一郎
中川淳一郎

 「多少の批判」を記事にするメディア

 そして【2】の〈「炎上した」「批判が寄せられた」「賛否両論となっている」とメディアが報じることによって「炎上したこと」になってしまうもの〉だが、これは本当にタチが悪い。

 2000年代後半は、ネットニュースが「炎上した」と断言するような論調になっていた。最近はさすがに各編集部も断言するのはマズいと考えるのか「批判が寄せられた」「賛否両論」と表記するようになっているが、記事を読めば「炎上した」と結局は解釈されることになる。

 この手の報道については、むしろそのニュースサイトに抗議をしてしまっても良い。結局、PVを稼ぐために記事を安価で量産したい各ニュースサイトの思惑に企業の「批判された」案件が利用されているだけなのである。

 「あんたらが我々のことを批判的に報じたからコールセンターに苦情が寄せられていて業務妨害になっている。いい加減、『多少の批判』を記事にしないでもらえます?」とそのサイトに抗議をすれば、そのサイトは「あの会社はウザいからもう取り扱うな」となる。

 これは私がこの14年間、ネットニュースにかかわっているから言えることである。正直、ネットニュースというものはPVさえ取れれば良く、文句を言うウザい人々は扱わないようにしよう、という判断になる。だったら企業がやるべきは「ウザいヤツになる」ということだ。

 当然、好意的な宣伝になるような話題も取り扱われなくなるだろうから、そこら辺の判断はした方がいいが、「今後、こいつらは我々を好意的に取り上げない」という感覚があるのならば抗議していい。

 そして、大事なのが「炎上されたこと」にされたSNSの「中の人」のことは社員総出で守ってやるべきである。責めたり始末書を書かせるなどもってのほか。その従業員は、皆がやりたくないことをやらされ、リスクを負ってきたのだ。たまたま批判されたからといってその従業員を社内でつるし上げるなどあってはならない。その人はすでにネットで叩かれまくっているのだから、身内にまで叩かれたら精神を病んでしまう。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう) ネットニュース編集者
PRプランナー
1973年東京都生まれ。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『謝罪大国ニッポン』『バカざんまい』など多数。

【ビジネストラブル撃退道】は中川淳一郎さんが、職場の人間関係や取引先、出張時などあらゆるビジネスシーンで想定される様々なトラブルの正しい解決法を、ときにユーモアを交えながら伝授するコラムです。更新は原則第4水曜日。アーカイブはこちら

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