Indeedで検索して表示される情報は、リクルートの営業マンが獲得してきた求人広告ではありません。Indeedは簡単に言えば、“求人情報に特化したGoogle(グーグル)”です。インターネット上を巡回(クロールといいます)して、各企業のHPに掲載されていたり、他の企業の求人サイトで公開されている情報を集める検索エンジンです。
ここにきて、リクルートHDは「IT企業」としての側面を見せてきていると言えるのです。
出木場氏の社長就任が示唆すること
求人情報誌が求人情報サイトへと形態を変えましたが、掲載するメディアと課金方法が変わっただけで、事業としては大きな変革はありませんでした。それだけだと、「既存事業のIT対応」がうまくいった企業という印象です。
しかし、Indeedは検索プラットフォームです。求人情報の掲載自体は無料ですが、その求人情報を「検索結果で上位に表示させるために企業が払う費用」などが売り上げにつながり、同社のこれまでのビジネスとは大きく異なるのです。「営業マンが人海戦術で広告を集める」という労働集約的なビジネスモデルからの転換とも言えます。この事業を進めてきた出木場氏の社長就任は、今後のリクルートの方向性を示唆しているのでしょう。
ちなみに、リクルートHDの決算では、Indeedは「HR テクノロジー」という項目になっています。一方、リクナビなどの求人サイトは先ほどご紹介したように「メディア&ソリューション」という位置づけです。その点からも、やはりIndeedは検索“テクノロジー“であり、リクナビはあくまで求人“媒体”なのです。
「Amazon」になりたいリクルート
リクルートの理想形はAmazon(アマゾン)でしょう。多くの人は物を買うときに、Amazonをまず検索します。出品者はAmazonに出品しなければ見つけてもらうことができません。
「物以外の購買の機会には、リクルートを利用するのが一番である」
リクルートの狙いはこのようなシステムを作り出すことだと思います。これまでは出品者・出店者を営業マンが必死になって集めていましたが、IT企業として良質なプラットフォームを構築出来れば、顧客を一気に集めることが出来ます。商材を持った人々はそのプラットフォームに乗らざるを得なくなるのです。
これまで元気で優秀な文系人材を集めてきたリクルートですが、それ以上に優秀な理系人材を「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業と取り合うことに力を入れています。
かつてリクルート出身の“元リクルート人材”は、「売る力」という、起業家として最も重要な力を持っているがゆえに新規事業を生み出し、軌道に乗せる実績を残してきました。ここ10年くらいはちょっと勢いがなくなった気配でしたが、大きく様変わりしたリクルートから、GAFAのようにIT起業家を輩出するようになることを期待したいところです。
【今日から使えるロジカルシンキング】は子供向けにロジカルシンキングのスキルを身につける講座やワークショップを開講する学習塾「ロジム」の塾長・苅野進さんがビジネスパーソンのみなさんにロジカルシンキングの基本を伝える連載です。アーカイブはこちら