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ブレストはキケン? 話し合いで決めることの不都合な真実 (2/3ページ)

藤田尚弓
藤田尚弓

みんなで決めることの不都合な真実2:思うほど意見やアイデアは増えない

 自分では気がつかないアイデアを聞けたり、見落としを指摘してもらったり。多くの人がそんなポジティブな経験をしたことがあるのではないでしょうか。多くのアイデアが欲しい場合には「ブレスト(ブレインストーミングの略)が一番」と決めている人もいるかも知れません。

 「結論を急がない」「発言の質にこだわらない」「自由に発言する」「人の意見から連想する」といったルールのもとに発言をするブレストは、ビジネスでもよく使われる会議手法です。しかしブレストの効果については多くの研究がされており、生産性を高めるという面がある一方で、生産性を阻害する面があるということも明らかになっています。

  • 【ブレストが生産性を高めた例】
  • ブレストを行うことで、今まで気づかなかった複数のアイデアが出て業務が改善された
  • 【ブレストが生産性を阻害した例】
  • ブレストをしてみたが、思ったほど新しいアイデアは出なかった。時間ばかりがかかって、業務に遅れが出た

 過去にブレストをしたことがある人は、そのときの様子を想像してみてください。誰かの発言を聞くことで、自分が発言するタイミングを逃したり、そのためにアイデアを忘れてしまったりということはありませんか。

《例》

「Bさんのアイデアは、さっきのAさんの発言に似ているな。この発言が終わったら次は自分が手を挙げよう。あ、どんなアイデアだったっけ」

 「こんなアイデアを言ったらバカにされるのではないか」と評価を気にして、発言しなくなるケースもあるのではないでしょうか。

《例》

「さすがにこの製品の用途を××にするという案は突飛だよなぁ。ブレストとは言え、もっと現実的なことを考えなきゃ」

 いい意見が出て賛同する人がいた場合、自分も同調したくなりませんか。

《例》

「お、この意見はまともだな。Cさんは、さっき俺のアイデアにも頷いてくれていたし。みんなも賛成しているから、俺も褒めておこう」

 「自分が言わなくても、みんなが意見を出してくれるだろう」といった手抜きをしやすい気持ちになる人もいるかも知れません。

《例》

「ブレストなんて面倒だな。とりあえず、一つくらい発言して、後は適当にやろう。どうせ誰かが発言してくれるだろうし」

 人数が増えれば、意見やアイデアは増えます。しかし、話し合いという場では、他者からの影響がネガティブに働き、逆に意見を抑制してしまうこともあります。シンプルに意見やアイデアを増やしたい場合には、話し合いの場を設けるよりも、1人で考えてもらったことを持ち寄る形も検討したほうがよいでしょう。

《例》

「商品Aの販促案についての会議をします」

 ↓

「商品Aの販促案を考えてもらいたいと思います。○日までに、案を3つ考えてメールで提出よろしくお願いします」

みんなで決めることの不都合な真実3:時間がかかる

 みんなで決めれば、様々な立場の人にも納得してもらうことができます。リーダーにはわからなかったポイントが見えてくることもあります。しかし、出てきた意見がすべて正しいものではありませんし、すべての人の意見を反映することは難しいものです。意見を聞いているうちに収拾がつかなくなってしまうこともあります。そうでなくとも、みんなで話し合って決めるというのは時間がかかります。

《例》

社員A「マニュアルを作るといっても、まずはサービスの定義から始めないと意味がないのではないでしょうか」

社員B「それに、何をベースに、誰が作るかも問題です。そもそもマニュアルが正しくなければ、みんなが間違うことになります。誰が責任をとるんですか」

上司C「うーん。では検討しておくので、また次の会議で話し合おう」

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