未来の進路に振り回される学習塾
受験シーズンが終わりました。私は普段、小学生から高校生までが通う学習教室を経営しています。その中では、子どもはもちろんのこと、保護者の方にも「どうなりたいのか?」「どうしたいのか?」を考えてもらわなければいけない場面が多くあります。顧客である生徒・保護者の「どうしたいのか?」を把握できなければ、こちらとしてもサービスの提供のしようがありません。みなさんも営業の場面を想像して頂ければ、まずは「needs(ニーズ)」の把握というのが当然とお考えでしょう。
しかし、面談の場で明確な「こうしたい」「こうなりたい」を話すことができるような生徒・保護者はほとんどいません。そして、たとえ話してもらえたとしても朝令暮改はあたりまえです。「やっぱり違うかも…」ならまだましで、「そんなこと言いましたっけ?」が日常茶飯事です。
- 「将来は海外で活躍したいので英語に力を入れている学校を目指したい」
- 「中学生になったら理科を頑張りたいので理科の部活が充実している学校がいい」
- 「どうしても算数が得意になりたいので、課題を指示してほしい」
確かに明言していたこれらの「ご要望」がひっくり返るのです。しかも、それらに確かに対応しても「なんか違うんですよね…」という低い満足度。まさに、振り回されるのです。
顧客とは、未来よりも先に「現在」「過去」の話をすべき
というわけで今日のテーマは「顧客の未来」の話です。
顧客の「~したい」というニーズは、売る側からするとまさにサービスに直結します。ですから、これを把握したいのです。しかし、顧客は「~したい」という未来について、自分のことにも関わらず正確には把握できていないものなのです。
- 「どんな学校をお探しですか?」
- 「どのような商品をご要望でしょうか?」
このような質問を受けるとほとんどの人は、口ごもります。無理やり絞り出したり、こちらから出した「~な感じですか?」という助け舟に「そんな気がします」と乗ってきたり。そしてそんな「無理やり作り出した要望」をベースにしてサービスの構築をしていくと満足度が低くなるのは当然なのです。
今回は、営業のフレームワークとして「GKM」を確認しておきたいと思います。顧客には「過去・現在・未来を区別して話せ」というのは営業における基本ですが、私は話す順番も重要だと考えています。「GKM」は、渡辺真知子さんのヒット曲「迷い道」の有名な歌詞を転用したもので、
G:現在
↓
K:過去
↓
M:未来
…の順で話をしましょう
という単純なものなのです。しかし、私たちは経験を積み、目の前の相手よりも商品知識が増えてくると「この商品を使えばこんないいことがあるんだから当然買うべきだ」という姿勢で、その商品を顧客に勧めます。同じだけの商品知識のない顧客からすると、納得する理由も与えられないまま、勧められた商品を買わされ、知らず知らずのうちに「満足度の低い結果」になってしまっているということに注意してほしいものです。
同じ商品でも、過去・現在を共有するプロセスは、顧客満足度を高める
この話を研修ですると、未来であっても、過去・現在であっても「実際に提供する商品やサービスに差はないではないか?」という意見を頂きます。
しかし、私は「満足度」について再確認する必要があると思います。例として、ランニングを趣味とする人に対して新しいランニングシューズを売るプロセスを見てみましょう。