ローカリゼーションマップ

滑舌よくスラスラ、朴訥で丁寧… 「話し方」のヒエラルキーなど存在しない (3/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 テレビのアナウンサーは不特定多数、それも一般の人が相手にする人の数とは桁が圧倒的に違う。何十万や何百万という数だ。どこかの会場で有名な人が講演しても何千人というレベルだ。

 学校の先生が授業で話す相手は何十人から何百人だろう。会社の会議でプレゼンするのに何十人もいればかなり多い。どこかの潜在顧客に営業トークするなら相手は2-3人がせいぜいだ。

 

 恋人を口説くなら相手は絶対1人だが、結婚を認めてもらうなら相手の両親を含めて3人かもしれない。

 つまり話す場によって違ったレベルの技量が求められるに過ぎず、多くの人にとっては何百人を相手にすることなどそうそうないのだから、YouTuberの話し方を気にするなど的外れなのだ。

 冒頭の話に戻る。仮に職人さんが話下手だと思い込んでいるとしたら場数が少ないのだ。違ったシーンで話し方の違ったテクニックが要されると実感するための場数だ。たまさか営業の人が上手く話すなら、ある程度バラエティーに富んだ場に入ることで、幅の広い話題についていく習慣がついたのだ。

 北林さんは「今年は、親子のためのコースもつくったので、小さいお子さんもいらっしゃいました。職人さんもお子さんに分かっていただけるよう、一生懸命、説明に工夫を凝らしてくださいました」と話す。

 話を聞いた10歳の子が、大人になったらその工房に弟子入りしたいと宣言したそうだ。

 他人から学ぶことは多い。だが、それぞれのシーンで人は誰もが自分の持ち場で話し方の達人だ。どこかにモデルがあるはずがないのだ。苦労するなら、モデルを求めるより場数を増やすことにエネルギーを使うべきだろう。

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『「メイド・イン・イタリー」はなぜ強いのか?:世界を魅了する<意味>の戦略的デザイン』『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
Twitter:@anzaih
note:https://note.mu/anzaih
Instagram:@anzaih
ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus