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ヴァレンティノの動画が“炎上” 異文化にからむ地雷 (1/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 文化はいつの時代においても大切な存在だ。この10-20年、その重要さがさらに増している。ビジネスの世界においても、文化が多面的に捉えられるようになった。「文化を知るのは売り上げを向上させるため」だけでなく、「文化は社会の余裕」だけでもない。「文化を知らないと、人の生命を危機に陥れる」「文化の無知は社会統合の阻害になる」などさまざま点に及ぶ。

 3月、一つの動画が日本で炎上した。イタリアの高級ファッションブランドのヴァレンティノの動画だ。モデルの日本人女性Kokiが畳の上で靴を履いている。着物の帯を連想される長い生地の上を靴で歩く。そんなシーンがあった。

 これが文字通り「日本の文化を踏みにじった」と解釈されたのである。ヴァレンティノはこの批判に対して謝罪を行い、動画を削除した。

 最近の特徴は、こうした「事故」が瞬時に目立つようになったことである。かつてもそういう「誤解」はたびたびあったが、ソーシャルメディアで拡散して多くの人が即知ることもなかった。あるいは、「誤解」が文化的不平等の産物であるともさほど認識しなかった。

 19世紀のフランスの画家が日本人女性を想像して描いたことは、日本の文化的プライドを傷つけられたというより、当時の文化的中心地である欧州で日本文化が認知されたと(後で)思った人が多かっただろう。

 それが現在、異なる文化の相互理解を促すプロセスとみなすのか、イノベーションの単なるネタなのか、経済的文化的優位性をもつ立場の文化盗用であるのか、さまざまなレベルで判断される。

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