ぼくは2005年あたりからローカリゼーションマップをはじめ、ビジネスにおける異文化理解の大切さを説き始めた。
変化の推移はこうだ。
1980年代まで異文化理解とは人間工学的な側面が強かった。市場の多くのユーザーの身体にあわない製品は使えない、と。1990年以降、一般の人が電子機器を使うようになり、人間工学だけではく、認知科学の面にも注意を払う必要がでてきた。カーナビの提示する情報を即把握できないと、運転者かその周辺の人の命を危険に晒すからだ。
今世紀に入りソーシャルメディアが発達したことによって、あらゆる文化的違和感が瞬時に明るみになるようになった。時に、支配的と(思われている)文化圏の企業が他の文化圏の要素を用いることを「文化盗用」と指摘される。
異文化要素の利用そのものも、オリジナル文化への敬意があるかが問われ、それ次第で文化盗用か否かが判断されるとは考えられるが、敬意の有無が具体的にどのような行為によって示されるのかは議論の焦点になる。
引用元を記載すればよいのか、オリジナルの国の人たちの意見を聞いておけばよいのか、線引きはそう容易ではない。
かといって、他の文化の要素をまったく使わない表現など現実としてあり得ない。さらに、ある国の人々においては他国の文化を輸入して100%消化したつもりになっているが、オリジナル文化発信国の人々はそれを趣味の悪い改悪版程度にしか見ていないものだ。
異文化にからむ地雷はあなたが想定している以上に多い。
【ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。