「ビジネス視点」で読み解く農業

農業振興の最前線 (2) 自治体、JA、生産者、関連産業、県民が一体に 宮崎県にみる農業活性の在り方 (2/2ページ)

池本博則
池本博則

■就農したいエリアで扱いたい品目が学べる「トレーニングセンター」

 また、就農したいエリアで、扱いたい品目の栽培方法が学べる「トレーニングセンター」も素晴らしい取り組みです。宮崎県では県内各地に数多くの就農トレーニング施設が行政・JA・農業振興公社の連携により整備されており、既に多くの新規就農者がここを巣立っています。研修品目は施設によって異なるため、就農者が希望する品目の栽培方法を選択して、学ぶ事が可能です。また、研修を通して地域の農家と交流できるため、就農準備や就農後の準備がスムーズに進められます。

 宮崎のこうした就農希望者に寄り添う切れ目のない対策は、まさにその人の「人生を丸ごと支援する」体制になっています。そうした部分が就農者を増加させる所以であると強く感じています。

■宮崎県にみた農業活性の在り方

 今回は宮崎県の就農への取り組み等をご紹介しました。私が日本全国様々な地域の農業振興を支援する仕事をしている中で、特に宮崎県に感じるのは「一体感」です。私たち民間企業を受け入れて一緒に取り組むそのスタンス。また、自治体のみならず、JA、生産者、関連産業、そして県民が一体となって、就農希望者を地域へ取り込んでいく。そうしたところに宮崎の強みを感じています。

 大体の地域には必ずパワーバランスがあるもので、正直足の引っ張り合い(笑)をしているケースを沢山見てきましたが、そうではなく、課題解決のために新しいものを受け入れ、地域全体で基幹産業を盛り上げる体制が自然と出来ている。そうした印象を受けました(これは、民間企業の視点としてはとても大切で、特に農業は地域のパワーバランスをしっかりと図りながら関係性を構築することが必要です。その困難さを最も感じなかった地域と言っても過言ではないのが宮崎県でした)。

 県の担当者とお話していた時に、宮崎の一体感の礎を作ったといえる、象徴的な出来事について聞くことがありました。平成22年に発生した「口蹄疫」についてです。農業は動植物を育て、それを価値化するビジネスですが、口蹄疫発生の影響により県全体で29万7808頭の家畜の命を絶たねばならないという産業として絶望的な状況になったそう。県は「非常事態宣言」を発表し、農業のみならず、観光業、商工業、流通業など各方面に深刻な影響をもたらしました。この口蹄疫の発生の際、県全体で産業間の垣根を越えた「連携」の大切さを学び、それが今の「連携」に反映しているとおっしゃっていました。

 平成から令和への変化は、単に元号が変わっただけでなく、政治経済や国際関係、あるいは気候や人の価値観の変化にも表れています。今後はこうした変化に、的確に対応し、地域ぐるみで連携して対応できる地域が最も強く、そして「生き残れる組織」だと思います。この宮崎県の取り組みが地域社会の発展そして農業の未来につながっていくよう今後も応援していきたいと思います。

池本博則(いけもと・ひろのり)
池本博則(いけもと・ひろのり) 株式会社マイナビ 執行役員 農業活性事業部事業部長
徳島県出身。2003年に株式会社マイナビ入社。就職情報事業本部で国内外大手企業の採用活動の支援を担当。17年8月より農業情報総合サイト「マイナビ農業」をスタートし、本格的に新規事業として農業分野に参入。「農業の未来を良くする」というVISIONを掲げ、日々農業に係る全ての人に「楽しい」「便利」「面白い」サービスを提供できる事業の創出のため土いじりから講演活動まで日本全国を奔走中!

【「ビジネス視点」で読み解く農業】「農業」マーケットを如何に採算のとれるビジネスとして捉えていくか-総合農業情報サイト『マイナビ農業』の池本博則氏が様々な取り組みを事例をもとにお伝えしていきます。更新は原則、隔週木曜日です。アーカイブはこちら

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