昨年のパンデミック以来、あの人のライフスタイルはどう変わったのだろう、と想うことがある。殊に、外で活発に動き回っていた人に対してそう想う。
フルビオ・ズビアーニもその一人だ。休みともなれば世界各地の貧困の国を訪ね写真を撮ってきた。それらを展覧会に出展。あるいはカレンダーをつくる。そうして販売収益を貧しい人たちを助けるNGOなどに寄付してきた。
2010年の大地震で30万人以上の命が失われたハイチにも飛んだ。無政府状態で大混乱のソマリアにも出かけた。それが、今はできない。
「パンデミックだけでなく個人的趣向の変化もあって、最近はミラノ市内のストリート写真を撮ることが多い。でも人は撮らない。工場跡の壁の落書や建築とかね」
そこで思い出した。
彼には一つのポリシーがある。彼は撮影対象の人と充分に時間をかけてコミュニケーションをとる。ソーシャルディスタンスが必要な現在、街中で見知らぬ人とコミュニケーションをとるのが難しい。そうすると、必然的に対象は人ではなくモノに向かうのだ。
ジェノバの大学で電子工学を勉強したフルビオは、若いころから世界各地を1人で旅した。文字通りカメラを携えて「歩く」。
卒業後はテレマーケティングの会社に就職した。ワインが好きだった彼は30代後半、ソムリエのコースに通う。その結果、ワインは趣味ではなく本業となった。ワインやクラフトビールのプロモーションなどを企画・実施する会社を経営することにしたのだ。
いわば「人生の散策」のなかで見いだした仕事だ。