この変革への強い意志は、かつてこの国を強くするために多くの企業の創業に係った地元の偉人・渋沢栄一氏のフィロソフィーを脈々と受け継いでいることを感じました。強いからこそ、強みを生かして変えていくこと。このキーワードが深谷市の取り組みにユニークさ、斬新さを与えていきます。この進化を恐れない姿勢は農業振興や地域振興をしていくにあたって起点となる大切な考え方であり、振興を支えることをビジネスとしている私たちとしても基点しなくてはいけない考え方だと学ばせていただいたことを、今振り返ると強く感じています。
しかしそうは言えど、「新しい事(モノ)を受け入れない」、「コミュニティが広がらない」といった空気は少なからず存在していました。今が良ければ良い。将来的に変わらず享受できる。そうした思考が地域の中に潜在的に潜んでいる。これを変革出来ればこれは深谷市だけではなく、農業界自体も変える大きな力になる。地域の農業界も変革し、かつ日本の農業課題にも大きく変化を与える--そうした取り組みの基盤が生まれていくのでした。
■深谷市の取り組むべき方向性 それは新しい知を深谷へ集積すること
ご担当者とのやり取りの中で、次第に深谷市の新しい産業ブランディング推進をサポートする方向性が定まってきました。
それは公式のコメントとして次の通り発表されました。「深谷市は、農業振興地域がまち全体に広がり、開発を伴う製造業などの誘致が非常に困難な状況にある一方で、農業と食品製造業については、地域の取引の核となる産業となっていってほしいという事。そして、深谷市の今の産業の強みを生かして、アグリテック(農業×製造業・IT)関連企業の集積を図り、本市における農業課題の解決、農業生産性の向上、そして何よりその取り組みが未来に広がり、「儲かる」農業の実現を図るという事を目的に「アグリテック集積戦略」を策定します。」そうしたメッセージを皮切りにいよいよ具体的な取り組みが始まりました。
令和元年6月27日(木)、深谷市長がアグリテック集積に向け、『アグリテック集積宣言』を出しました。同時に、世界のテクノロジーを支える巨大企業たちを生んできた地であり、多くの新興ベンチャー企業たちが密集する地域であるアメリカ・シリコンバレーをオマージュする形で、アグリテック集積都市DEEP VALLEY(ディープバレー)を形成することを目指すプロジェクトがが始まるのでした!(ちなみに、深谷を英訳するとDeep Valleyです)。
初めに取り組んだ「DEEP VALLEY Agritech Award」は、儲かる農業都市の実現のため、深谷市の農家が抱える農業課題を解決する自社の独自の技術(アグリテック)、アイデア、ビジネスモデルをビジネスコンテスト形式で提案してもらうもの。意欲溢れる企業を表彰する形式で令和元年よりスタートしました。※宣伝となりますが、現在第3回目(3年目)となる。コンテストの募集も開始しています。
■DEEP VALLEY Agritech Award(ディープバレーアグリテックアワード)
これまでの2年間、このアグリテックアワードを通して受賞をされた企業による取り組みが深谷市で始まっていますし、このプロジェクトが動いたことにより、地域の意識の変化が生まれてきています。
次回では、実際の取り組みと状況についてお話させていただきます。
【「ビジネス視点」で読み解く農業】「農業」マーケットを如何に採算のとれるビジネスとして捉えていくか-総合農業情報サイト『マイナビ農業』の池本博則氏が様々な取り組みを事例をもとにお伝えしていきます。更新は原則、隔週木曜日です。アーカイブはこちら