ぼくはデジタルネイティブの世代のもつ感覚やスキルに大いに期待している。彼ら彼女らに多くのことを委ねた方がいい。そう思っている人たちは世代を問わず多いはずだ。なにせ、彼ら彼女らは文字通り、生まれた時から「あるのが自然のようなデジタル環境」で生きてきたからだ。
だから非デジタルネイティブ世代は、デジタルについて新しい世代に対して語れることは少ないと思いがちである。だが、反対に非デザインネイティブ世代は、情報処理能力の発展史を何となく知っている。したがって、このデジタル世界はつくり変えられる余地が大きいと思っている…というのが、緒方さんの前述の言葉から導き出せる推測だ。
若い世代の足を引っ張るのではなく若い世代を鼓舞するために、その経験や想いを使えるだろうか。彼ら彼女らに何らかの智恵やデジタルの道具が生まれた当時の人々の喜びと戸惑いをナラティブに伝えた方がいいのではないか。
「そんなの聞き飽きたよ!」と若い世代に言われるかもしれない。その時にそそくさと退散するのではなく、対話を試みるとすれば、どんなスタイルと内容が良いのだろうか。
『コンヴィヴィアル・テクノロジー 人間とテクノロジーが共に生きる社会へ』 緒方壽人 (著)
【ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。