ビジネストラブル撃退道

発表前の新車をTwitterで公開…広告代理店・若手社員の“大失態”に学ぶこと (1/2ページ)

中川淳一郎
中川淳一郎

 社員が所属企業と関連した情報をネットに書き、炎上した結果、会社の広報や公式SNSが「不適切な発言をしました。申し訳ありませんでした」と謝罪をすることがあります。これに対し、「問題社員」への対応をどうすべきかは、会社にとっては重要なリスク管理です。

 広告代理店はクライアント企業の秘匿事項を握る存在です。そうした状態にあるからこそ、ついつい世間に対してその秘匿事項を書きたくなってしまうことがあるのでしょう。以前、私の知り合いが頭を抱えていたのが、彼の会社の若手社員が、発表前の新車の写真をツイッターで公開してしまった件です。

 広告代理店とメディアの違い

 自動車会社は、新車を自動車雑誌等の記者に発売の随分前にサーキット等で公開し、試乗をしてもらいます。ここでの取材を記事化してもらい、発売のタイミングで試乗記や事前ルポなどが掲載に至るのです。

 こうした現場には広告代理店の社員も同行します。この時、自動車メーカーからすれば広告代理店の人間は「身内」。今後の販売戦略を共に考える同志として信頼しているからこそ、秘匿事項を見せるわけです。

 モータージャーナリストを含めたメディア関係者も「身内」ですが、公正な目線で論評をする必要があるため、彼らと企業がなあなあの関係になるわけにはいきません。その車の良い点のみを広告表現等に落とし込む必要がある完全に身内の広告代理店の人間とは、やや立場が違うといえます。

 そんな関係性が自動車会社、広告代理店、自動車関連メディアには存在するのですが、批判をすることも仕事である記者・編集者でも「情報解禁日」はキチンと守ります。ジャーナリストとして関係性を悪くしてでも「この情報は出すべきである」という判断がされる可能性がゼロではありませんが、不用意に解禁前の情報を流出させてしまうと、その後の関係性が悪化するため、メディアの側にも「情報解禁破りはご法度」との意識があるのです。

 つまり、身内ではないメディア関係者でさえ「情報解禁日」は守るのに、私の知り合いの会社の若手社員はその協定を身内の立場で破ってしまったということです。

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