前述の領域から連想して「クラシック音楽もよく聞きますか?」と質問すると、「音楽自体、あまり聞かないわ。音に考えを邪魔されたくない」との答えだ。
彼女の好奇心は、幅を広げるのもさることながら、より深くいくように作動するのではないかとの仮説が浮かんだ。
ミラノで生まれ育ったフランチェスカは、小さな頃から活発で周囲の友人をひっぱっていくタイプだった。そして大学生のとき、既にドリアデでも働いていた。幼少の頃から食卓で母親から仕事の話を聞いていた彼女にとって、それは自然な「巻き込まれ方」だった。
カタログや本の編集・製作などに関わる。紙媒体のコミュニケーションのすべてをここで学んだ。言葉と画像のエキスパートになったのだ。
7年間働いてドリアデを後にする。家族から離れて自分自身のアイデンティティを求めたいと思ったようだ。その次にデザインジャーナリストとして雑誌の編集に長きにわたり携わる。ただ、それだけでなく、常にさまざまな種類のプロジェクトをこなしてきた。
数年前、独立してコミュニケーションのオフィスをモニカ・ラチックと運営している。企業の広報活動を担当し、ミラノサローネ国際家具見本市のコミュニケーションも手掛けた。ドリアデで経験したようにカタログつくりから発信までをカバーする。しかし、かつてと同じではない。コミュニケーションの重要性が増し、そのやり方も変化しつつある。
例えば、一時期、紙からデジタルにすべて置き換わると思われた。だが、今、紙の本の価値が再認識されてきている。したがい、デジタル媒体と紙媒体の両方をみたうえで各々の特徴を使いわける必要がある。
もちろん、フランチェスカのオフィスは両メディアを使うが、そのなかで紙媒体に表現する内容は、往時よりさらに深い意味が求められていることを彼女は体感しているわけだ。